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(2)他の大気汚染物質に関する対策技術

聞き取りの中では、IMO規制以降の規制の方向性としてCO2排出量の抑制が求められるのではないか、という意見が多くを占めた。CO2排出を抑えることは燃費の向上にほかならない。船舶の推進機関自体については、第一次石油危機時の燃料価格の急騰を契機に蒸気タービン機関からディーゼル機関への転換、さらにはディーゼル機関自体の高圧縮比などの技術改善が図られてきた。熱効率を例に取ると、1975年では40%程度であったものが現在では54%程度にまで技術進歩が進んでおり、システムとしてのディーゼル機関はほぼ完成形に近いとまで言われている。機関単体の一層の熱効率の改善のためには複合サイクル機関、セラミックディーゼルエンジン等の高効率機関の技術開発が進行中ではあるが、舶用機関に重要である信頼性を含めての実用化までにはさらに時間を要すると考えられる。推進機関の効率改善は今後も基礎的な技術として重要な課題であって、技術開発は継続されなければならない。しかし、現在、実現性が高く省エネルギー効果も大きいとされる技術方策は、プロペラ効率の改善、船体の軽量化および船型の改善・大型化である。プロペラの改善効果では二重反転プロペラによって省エネルギー効果が10〜20%あるとされ、プロペラの後ろに小さなフインをつけるPBCF(Propeller Boss Cap Fin)は、4%程度の省エネルギー効果があるとされている。船体の軽量化については、船舶の上部構造をアルミ材等で軽量化をした場合にはイニシャルコストは高いものの、現在の燃料価格レベルであってもライフサイクルで見れば採算はとれるとの結論が出されており(「船舶の軽量化に関する調査・研究委員会」SO財団主催)、普及が望まれるところである。

従来型船舶における省エネルギー効果が大きい手段として、大型化・減速運転が多く提案されており(燃料消費はスピードの3乗に比例)、NOx排出量についても効果があると考えられる。しかし、景気低迷による船腹過剰化、陸上トラック輸送との競合などにより原油タンカーのようなスケールメリットによる輸送原単位の量的改善志向は薄れつつあり、減速運転などの実施は困難と考えられた。

他方、推進抵抗を低減した新型式船の開発は今後も省エネルギーの観点から大いに期待すべき技術分野である。

 

 

 

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