3.1.2 各種排ガスの排出量算定の考え方
(1)NOx
NOxは、燃料中のN分が酸素と結びつくFuelNOxと、燃焼空気中のO2が高温高圧下でN2と結びつくThermalNOxとの両者により構成される。ディーゼル機関においては、上死点手前10°前後より燃料噴射が開始されるが、直ちに燃焼は始まらない。これを着火遅れと呼ぶ。その後の急激な燃焼時に熱発生率がもっとも高くなり、局所的に高圧な燃焼雰囲気もできると言われている。この第II期燃焼期と呼ばれる時期にNOx発生がもっと生じやすい。一般に燃焼温度が高いほど、酸素濃度が高いほど、また高温での滞留時間が長いほどThermalNOxが多く生成する。
従って、負荷割合、機関の種類、機関の規模などによりNOxの排出ガス濃度は大きく影響を受ける。一般には大型機関ほど低速であることから、サイクル当たりのThermalNOxが生成する時間が長いため、排出濃度も大きい。また、燃料の着火性は以下のような機構によりNOx排出濃度に大きな影響を与えると言われている。一般的にはMDOに対してMFOは、あるいはA重油に対してC重油は低質であり着火性に劣るのでNOx濃度にも差が生じる。
このようにNOxについては燃焼状態によりその排出濃度は大きな影響を受けるため、これまで見てきたように機関の規模や定格回転数など、機械工学的なパラメータを用いた排出量算定式が用いられる。
燃料の着火性悪い
↓
着火遅れが大きくなる
↓
第II期燃焼(予混合燃焼)量が増加
↓
Pmax、最高燃焼温度上昇
↓
NOxの生成量増