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1.4 調査結果の概要

 

1.4.1 舶用機関からの大気汚染物質の排出量に関する調査

(1)船舶排ガス排出量算定方法の調査検討

船舶排ガスの算出方法には、一定のテストサイクル下での機関単体の排出量を重視するIMO方式、機関の推定出力馬力から算定する環境庁方式、マクロな燃料消費量から算定するIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)方式の3種類に大別して整理を行うとともに、それぞれの特徴や適用の範囲についてまとめた。今回の調査目的である日本全体や世界全体の排出量を算定するには、燃料消費量から排出量を算定するIPCC方式が適していると考えられた。

(2)各種排ガスの排出量算定の考え方

対象大気汚染物質のうち、CO2、SO2については、燃料中の炭素または硫黄が酸化された後にほぼ100%放出されるため、燃焼状態によって大きく左右されることはない。一方、他の物質は燃焼状態によりその排出状況が大きく変化するため、実験結果や経験別による算定式が必要であることを整理した。また、NOxについてはIMO規制が提案され批准の段階に来ていることもあって、他のCO、NMVOC(Non-Methane Volatile Organic Carbons)、CH4、PMに比較して情報が多いことがわかった。

(3)排出係数の調査検討

環境庁、運輸省、舶用機関学会などの調査の比較検討を行った。環境庁のNOx規制マニュアルの排出係数は他の調査やIMO規制値と比較して小さく、現状の排出状況を表現するのに必ずしも充分でないことがわかった。また、燃料使用量については環境庁、舶用機関学会など、従来の算定式がおおよそ妥当なものであると考えられた。

また、東京湾、日本全体における排出量の比較を行い、排出量の差異を生じさせる要因についてまとめた。港湾域内でのミクロな排出量には停泊時のモデル化が大きく寄与することがわかった。

(4)排出係数の実体調査

国内の舶用機関メーカーに対して聞き取り調査を行い、主にNOx排出係数についての知見を得た。一部の機関については既にIMO規制に対応しているものの、現在市場に多く出向っている機関については規制値を超えるものも見られた。

国内においてNOx,SOx,CO,CO2,PMに関して実船調査を行った。その結果、陸上での試験結果より5〜10%程度高めの排出濃度が観測されたが、低質燃料及び負荷の影響なども考慮するとおおむね測定誤差の範囲内にあると考えられる。なお、2隻の大型船舶について実施した実船計測においては関係各位の多大なご協力を頂きました。改めて深謝致します。

 

 

 

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