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6] プロジェクトの課題点

近年、研究開発のフレーム、制度が大きく変わってきており、この動向を十分に踏まえた研究開発が求められることがわかった。委員からのアンケート回答をみると、失敗プロジェクトの原因は、「中途半端な計画」「ニーズの把握が不十分」「情報の公開が不十分」「最適な体制が組めなかった」ことなどが挙げられる。逆に、成功の要因は、「計画の徹底討論」「研究テーマのポイントが絞られた」「十分な予算」などであった。

 

7] 海洋の基本スコープ

これまでに議論した「海洋の研究開発動向」や「先端科学技術の動向」を踏まえながら、海洋利用の全体像を明らかにすべく、海洋の基本スコープとして整理した。

 

(3) 海洋観測・調査技術の現状と課題の抽出

各省庁における、船舶の保有状況を調査し、前項の技術開発の現状調査の結果を踏まえ、検討を重ねた結果、船舶を直接必要とする「海洋科学」や「地球環境」関連のプロジェクト数と船舶保有数の間に相関はみられないことがわかった。これについては、各省庁におけるプロジェクトの性格や船舶の運用方法に相当の違いがあるために、一概には判断できないが、各省庁が横断的により効率的な船舶の運用方法を生み出せれば、我が国の海洋関連プロジェクトの進展にも大きく寄与すると思われる。

 

(4) 先端技術開発の適用および可能性の調査検討

21世紀に向けた海洋の開発および利用のあり方を予見するために本調査では、「海洋知識資源開発」という視点を設定することとした。21世紀には引き続き、情報通信、コンピュータ、ロボット等のエレクトロニクス技術は飛躍的に発展する。図5.1-2に示すように、この方面での技術は、海洋技術にも応用され、地球環境維持のための海洋のメカニズムの解明、海洋生物の特殊な生態を明らかにし、その保全に役立つ知識が大幅に蓄積されることになろう。また、近年、海洋生物の多様性が強く認識されるようになってきた。海洋生物種は、現在確認されているだけでも地球上の全生物種の3分の2、未確認の海洋生物種を考慮するとそれ以上を占めると考えられている。このような生物の遺伝子資源は、人類の健康と難病を克服するための新たな医療品の開発、バイオテクノロジーの発展に寄与することが確認されるに至ってきた。これらは、海洋がもたらす知識の一つの側面にすぎないと考えられている。しかし、このような知識は、今後質、量ともに飛躍的に増大することが期待される。そこで、海のもたらす知識のうち、人類社会の発展に特に有益なものを「海洋知識源」と呼ぶことにし、これを積極的に取得するための技術開発を「海洋知識資源開発」と位置づけることにした。

 

 

 

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