4.3 海洋知識資源開発の体系
ここに述べる海洋知識資源の開発は、エレクトロニクス、コンピュータ、生命科学、宇宙利用など、現代の最先端の科学技術を導入することによって、一層の発展が期待される。それ故、海洋知識は、科学技術全体の進歩に併せてその課題は随時変わっていくものと考えられるが、海洋利用のニーズが続く限り、先端科学技術の応用領域を拡大し、産業の発展にも寄与するものと期待される。
21世紀初頭において、コンピュータネットワークの発達が、最も科学技術の進歩に大きな寄与をもたらすとの考えに基づいて、第1に、情報通信分野において海洋特有の知識が必要とされるテーマをおいた。ロボット技術あるいは人工知能システムは、今後最も発展が期待され、我が国の独自性が高い分野である。海洋ロボティクスへの応用は、海洋に係わる人類の知見と活動領域を拡大する上で必須な基盤技術となる。ついで、生命科学技術および生物種の多様性の保全では、生命が進化の過程で取得した高度な物質操作技術、遺伝子情報、過酷な海洋環境への適応に係わる英知の解明が課題となり、人類が地球進化の過程で受け継ぐべき最も重要な海洋知識資源の獲得につながる。地球環境の維持は、化石エネルギーの消費に支えられた産業社会において深刻な課題となっている。上述した技術開発を総合する位置づけにある海洋-大気-陸域との間に成り立つ地球科学プロセスを解明しつつ、これを利用する知識の構築を最後においた。
(1) 情報通信
海洋生物の機能を最先端のエレクトロニクスを用いて実現するバイオニクスに基づきながら、海洋表面および海底のリモートセンシングおよび海中内での情報伝送を高精度かつ高速に行う技術を開発し、利用できる海洋情報を多様化することによって、観測の高度化、水産資源の確保あるいは船舶等の洋上安全など海洋利用の高度化を図る。
1] 海中コンピュータビジョン(コンピュータによる3次元ビジョン)
音響、レーザー、レーダー、光学画像信号などをもとに、海水中の物体に関するデータを3次元画像化処理し、海底の立体地形あるいは底泥中の生物の生息状況などを可能な限り可視化する。また、遊泳する魚群の行動を3次元的にとらえ、定量的な行動解析を行うなど、海中の世界をバーチャルリアリティ技術を用いた擬似体験装置によって海洋をより身近な空間として感じ、知覚する技術。
2] 海中コミュニケーション(Through Water Communication)
音波、電磁波、光などを活用して高速かつ多量のデータを海水を媒介して行う技術。各種機器の制御、監視、人の会話などを地上と変わりなく行えるように最新の電子技術を活用する。海洋環境の連続モニタリング、海洋活動の安全に寄与する。