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(c) 造船業への適用

アエロスパシアルとボルボの両社におけるPDMの利用状況を整理すると以下のようになる。

・部品表の世界をPDMを使って表現している

・PDMは主として図面のバージョン管理に用いている

・今後は、製品のモデル情報そのものの管理に使うような方向で検討している

・現状のPDM製品の機能には満足しておらず、今後の機能向上に期待している

造船の船殻構造の設計における広範囲にわたるラフな情報から最終的に一つひとつの部品にまで詳細化しているという考え方と、部品の集まりで製品を表現する部品表の考え方には根本的な相違がある。現状のPDM製品は部品表で表現されている情報をそのままコンピューター上に表現することから出発しており、これをそのまま造船の情報生成段階に利用するのは難しいと判断される。しかし、両社ともこのようなPDM製品の機能には満足しておらず、将来的には造船における設計に相当するようなフェーズへのPDMの適用を目指している。このような有力ユーザーがこの方向を目指しているので、そのニーズを取り込んで、PDM製品がこの分野をカバーできるような形に進化していく可能性は高い。

(4) CIMシステムの運用改善に関する調査

(a) 業務の簡素化

オデンセ造船所では、同型船の建造が多いという背景もあるが、我が国の造船所に比べるとブロック分割検討や施工法検討に関しての複数部署間の頻繁な協業や技術打ち合わせが少ない。施工標準が確立しているので、そのルールに基いて単純業務化している度合いが強い。

アエロスパシアル社がその構成企業の一つとなっているエアバスインダストリー社では、標準機体を決めて個別受注前に先行的に設計を済ませており、戦略機種を絞り込むことで設計と生産のパターンを限定し簡素化している。

ボルボ社でも多くの部品を車種ごとに共通化し、部品を組み合せたモジュールの種類も限定して、設計・生産・流通の業務やシステム仕様を簡素化している。

一方、日本の造船所では一般的に色々な業務が複雑化している傾向にある。例えば、PDMやERPのような市販ソフトウェアを導入しようとする場合、既存業務と考え方が合わないことが多いため自社開発する結果となる。設計や生産技術を中心とする工法検討では、色々なケースを想定して最適解を追求することが多いが、頻繁な設計変更やバーションの複雑化で設計や計画のミスを誘発することもある。

高齢化、非熟練設計者化、業務システムの高度化等の動向からも高度造船CIMの基盤となる設計業務の手順と仕組みを簡略化し標準化して全体としての最適化を見直すことが重要である。

 

 

 

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