S2.2.4 海外において実施した技術調査から得た知見
本開発研究は知識共有の実現を目的としており、知識共有の実現に必要なシステム要件に関する知見を得るため、1.1.4に述べた通り、米国において、南カリフォルニア大学(USC)が協業支援環境構築のため研究中のプロセスモデルとエージェント技術を用いた先進的な協業支援システムについての調査と、代表的企業における最新の協業支援技術動向を調査し、一方、欧州における主要な企業を訪問して、先端的なリファレンスアーキテクチュアを実現するための調査を行ったので、その結果を以下にまとめた。
(1) 米国における協業支援技術の調査
(a) SBD (Simulation Based Design)プロジェクトの概要
DARPA(米国国防省高等研究機関)のプロジェクトで、企業をまたがって開発・設計される複雑な製品についてプロダクトモデルを中心とする設計協業協業環境を構築し、製品のライフサイクル全体にわたるコスト削減と設計機関短縮を目標としたもので、ロッキード・マーティン社が主契約社である。本来、SBDは事前シミュレーションにより設計・運用の最適化を図るものであるが、このプロジェクトはアプリケーションの連携による協業支援環境の構築が主体となっている。図S2.2-1はSBDシステムの全体像を示す。
(b) 得られた知見
SBDは高度造船CIMと同じく、協業環境の基盤としてCORBAによる分散オブジェクトに基づいてエージェント技術やプロセスモデルなどの情報技術を採用している。ORBによる協業支援環境実現へのアプローチも採用されていて、高度造船CIMの先端性と方向性の正しさを再確認した。特筆すべきことは:
・プロセスモデル:
設計者の業務プロセス(CADの操作履歴)を保存し、うまくいったケースの業務プロセスを次の設計に再利用し効率向上を目指す。
・エージェント技術:
設計者の協業支援にエージェントが積極的に介入し、支援する構成。設計変更は自動的に設計者に通知される。
・コストシミュレーション機能
シミュレーション結果をWWWブラウザで表示し、どこからでも簡単に参照可能などである。