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(5) プロセスモデル記述

1997年米国の政府機関であるNIST (National Institute of Standards and Technology)が中心となって、産・学・官界から有識者を集めて「汎用性のある高度なプロセス定義言語」PSL (Process Specification Language)の作成プロジェクトを発足させた。この背景には、製造業においては製造プロセスが根幹であるにもかかわらず、プロダクトデータなどがかなり高度なレベルでの表現方法で存在しているのに対し、プロセスデータの表現方法レベルが相対的に低いという産業界共通の認識がある。つまり、プロセスデータの表現においては、表面的なプロセスフローの単なるシーケンス的な記述(syntactic)だけでなく、達成目標(goal)、設計意図(design rationale)、制約条件表現(constraint)、オントロジ(ontology)などの意味的(semantic)なレベルの記述も十分できなければ発展性・保守性・自動化が本当の意味で達成し得ないということである。

PSLの基本的スタンスは以下のように整理される。

・製造業にかかわる全てのプロセスデータが統合的に記述可能なこと

・稼動システム環境に依存せず、また多種多様な市販のツール類が互いにプロセスデータを共有できること

・プロセスモデルは単にダイヤグラム的表現ができるだけでなく、意味的内容の深いレベルの情報共有化が可能であること

・表現形式は単に数学的・論理的に厳密に事象を記述できるだけでなく、一般の人間(エンドユーザー)にも理解修正できる表現形式も備えていること

上述の基本スタンスの下で、26種類の代表的なプロセス記述法の候補を調査し、PSLの要求仕様の満足度を評価している。その結果はPSLのホームページに詳細にまとめられている(http: //www.mel.nist.gov/psl/)。

調査結果の結論を要約すると次のようになる。

・オブジェクトベースのものと制約ベースのものが相対的にPSLとしての要件を満たしている

・ほとんどの手法がプロセスの意味内容というより表現方法に力点が置かれている

今後これらの調査結果から得られた知見をベースとして、製造業において汎用的に使うことのできるプロセスモデルと、アプリケーション間のプロセスモデル交換指針が提案される見通しである。

 

 

 

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