(b) 造船の常識を持つモデル
例えば「ロンジはトランスを貫通する」というように、造船には様々な常識がある。しかし、GPME CFLは組立産業汎用を目指して構築されたものであるため、「ロンジ」や「トランス」など造船にとっては常識とも言える部材の性格付けや区分を表現できるようにはなっていないし、EFL/Sにおいてもそこまでは考慮されていない。2つの部材が交差する場合、どちらがどちらを貫通するかを決定するための情報が、PM内に全く存在しないことになる。このように、造船に特化してはいるが造船にとっては常識とも言える知識をPMに持たせることによって、より効率的にかつ間違いなくモデルを構築できるようにする。
(c) 工作との連係
EFL/Sでは、施工法はGTコードや中間製品のネットワークの構造などによって表現される。しかし、一方ではそれらの情報と部材等の情報との間には明示的な関連はないため、施工法が変更になった場合、部材や部品の形状を決めるための前提条件となっていた施工法と部材や部品の形状との間に不整合が発生しても関知することができない。このようなことが起こらないようにするため、施工法変更の影響を設計情報に伝えられるようなモデルとする。
(2) 拡張の概要
(a) 相対定義の導入
設計変更に対して柔軟に対応できるようにするため、定義する対象の位置や形状を他の情報を基準にして相対的に定義できるようにした。これによって、基準となっている情報の位置や形状の変更に対して追従させることが可能となった。
相対定義については、造船所でのエーズ調査などを実施した結果、以下を対象として導入することとした。
・フリーエッジとループドエッジ
・条材取付線
・継手
・ブロック分割面と分割線
・構造詳細パターンの基準位置
これらの対象についての位置や形状を、基準となる他の板材のフリーエッジとループドエッジ、条材の取付線と端部位置、継手、ブロック分割面と分割線、更に部材間の接合線などからの相対的な定義で表現できるようにした。
例えば、トランスリング上で2つのロンジの頭を結ぶスティフナがあるとする。このスティフナの取付線について「2つのロンジの頭を結んで得られる直線」という相対的な定義を保持し、この情報に基づいて計算するような仕組みとしておくことによって、基準となるロンジの位置や角度が変わったとしても、相対定義に合った形でスティフナの取付線が再計算される。