4.3 船殻構造フレームライブラリ共通機能の拡張
本節では、船殻構造FLを拡張するための方向、方針及び拡張内容を明確にするとともに、実際の拡張結果を示す。
4.3.1 拡張に当たっての方針
FLの拡張仕様を検討するためには、拡張後のFLがどの範囲の業務を支援するかを決めなければならない。
そこで、FL拡張仕様検討の業務分析結果においてアクティビティ単位で下記のいずれかに分類されるものを、FL拡張に当たっての対象範囲とした。
・FLによって自動的に情報が決定される
・FLが選択候補をリストアップし、その中から人またはアプリケーションが選択する
・FLが人またはアプリケーションの意思決定に必要な情報を提供する
・情報の共有化のため、与えられた情報を保持する
逆に、処理自体にFLが関与せず、更に結果をFLに保存または反映しないものは、FL拡張の対象範囲には含まないこととした。
結果的に、設計部材の配置や形状・属性を決定していく、いわゆる設計作業そのものをFL拡張仕様検討のための対象業務にすることとし、強度や船級協会のルール計算等については将来拡張が可能となるように考慮するにとどめ、部品のネスティングなどは対象外とした。
また、拡張仕様の実装に当たってはGPME FL設計時の方針や考え方をできるだけ踏襲し、作り直しではなく拡張によって必要な機能を極力実現する方針で取り組んだ。
4.3.2 柔軟性向上に対する拡張
(1) 求められる柔軟性と必要機能
拡張仕様検討のための対象業務を支援するためには多くの機能が必要となるが、特に柔軟性の観点から以下を実現できるFLであることが求められる。
(a) 設計変更に対する柔軟な対応
FLを拡張する前であっても、決定した情報に基づいてモデルを構築することは十分可能であると言える。しかし、設計の初期には試行錯誤が多く、これに伴いモデルを変更する必要が生じる。通常、ある部分を変更するとその影響は関連する他の部分にも波及する。関連する部分をそのままにしておくと矛盾が発生するので、つじつまを合わせるため影響の及ぶ範囲に対して直接的に修正する必要がある。この変更作業を一つひとつ手で行うことは可能だが、人が行う場合は直し間違いや直し忘れがあり得る。そこで、このような変更に伴う関連部材の自動修正を、造船の常識に基づいた一定のルールに従って、システムが自動的にまた間違いなく行えるようにする。