本開発研究では、ファイルオープンや、完了ボタンクリック等のワークエレメントの実行に伴って発生する様々な「イベント」をエージェントが収集し、そのイベントからエージェントがアクティビティ内部で実行中のワークエレメントを推測して、状況を認識しそれに応じた適切な処理を行うという協業支援メカニズムを考案した。
イベントは、アクティビティ内部で発生する作業に関連する一種の信号であり、一つあるいは複数のワークエレメントと関連している。エージェントは、一つまたは組み合わさった複数のイベントの情報から現在実行中のワークエレメントを推測する。従って、エージェントには、いくつかのイベント群から進行中のワークエレメントを推測するための知識が必要となる。
(イ) イベントによるワークエレメント間の依存関係の設定
実行中のワークエレメントが推測できれば、エージェントは推測したイベントに対応した支援処理を実行する。例えば、ワークエレメント同士の依存関係は「技術者AとBが、ワークエレメントWaとWbを実行中に通信した」というイベントを基に、ワークエレメントWaとWbの依存関係を設定する。こうして技術者AがWaを変更した場合には技術者Bに通知するといった支援が可能となる。また、エージェントはいくつかのイベント情報から、前工程の進捗遅れ等予定外の状態、すなわち、例外事項(エキセプション)を推論し、それに対する支援処理も同様に実行する。
ここで、イベントに対する応答処理が1対1に対応することは確実にできるであろうし、いくつかのイベント群から応答処理を推論せねばならないものについては不確実性が含まれる。
このように、エージェントによる協業支援メカニズムの観点から、ワークエレメントのプロセスモデルに以下の構成要素を反映させることを検討している。
・イベント:
ファイルオープンや、完了ボタンクリックなどエンジニアが何らかのオペレーションを実行した時に発生する観察可能な事象
・エクセプション:
設計変更等の例外事項。エージェントが一連のイベントからエクセプションの発生を推論する
・エクセプションヘの応答処理:
仕事の割り当て、監視・報告・通達・依頼・命令等
以上のように、本年度は協業支援のためのプロセスモデルの基本構成を検討し、アクティビティとワークエレメントの概念を導入し、それらが持つべき情報を明らかにした。また、協業支援のメカニズムの視点からプロセスモデルに要求される動作の仕組み、すなわち、イベントやエキセプションの概念を検討した。来年度はこれらを表現するクラス構成を明確化し、動作メカニズムを開発していく。