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アクティビティの機能は、作業oと、その対象となる製品dによって定義できる。例えば、船殻設計というアクティビティの機能は、船殻部材という製品に対して設計という行為をすることと言える。これらの要素に加えて、アクティビティヘの要求事項qと、利用する資源uが合わさって、アクティビティの振る舞いBが決まる。

式3.2-2のアクティビティの定義によると、アクティビティ内部で実行される詳細な作業は、そのアクティビティが対象とする製品の一部分に関しての作業と考えることができる。例えば船殻設計というアクティビティは、スティフナの設計といった細かく分割された作業が集まって実行されている。この場合、設計という作業は変わらないが、扱う製品が細分化されていることが分かる。

(イ) ワークエレメントの導入

このようなアクティビティ内部の要素作業をワークエレメントと呼ぶことにした。ワークエレメントは、式3.2-3のように表現される。

wei={o,dei}  wei⊂a, i=1,...,S  式3.2-3

ワークエレメントの業務プロセスは、業務開始後は、発生する問題や技術者の所属ドメイン(業務の常識)によって、互いの作業の依存関係(実行順等)が複雑に変化し、アクティビティレベルの業務プロセスのように明確に記述できない。更に、ワークエレメント同士の依存関係は、同じアクティビティ内部にとどまらず、別々のアクティビティのワークエレメント同士にも発生する(一般的にはアクティビティの単位に担当者が割り当てられるので、技術者の協業支援の観点からは、アクティビティをまたいだワークエレメントの依存関係は特に重要となる)。

これらの理由から、現状の市販ワークフローシステムでは、ワークエレメントレベルの詳細な業務プロセスに対してシステムによる協業支援ができず、全て人間系の情報ネットワークで対応している。また、このレベルの業務プロセスを顕在化して定式化できないことが、業務知識を共有するうえでの阻害要因となっている。

(ウ) アクティビティとワークエレメントの関係

以上に述べた業務プロセス、アクティビティ及びワークエレメントの関係を整理して図3.2-2に示す。図の3個の大円はアクティビティを、その内部の小円はワークエレメントを示す。業務開始前に、各アクティビティの実行順序が業務プロセスとして記述され、進捗管理はこのレベルで実施される。一方、アクティビティ内部のワークエレメント同士にも、標準的な業務プロセスは記述されている。業務の開始後は、ワークエレメント同士の依存関係(図中点線)が他の設計者とのインターラクションの結果として追加され、業務開始前に記述した業務プロセスから動的に変化しながら実際の作業は進行する。ただし、マクロ的にはアクティビティレベルで記述された業務プロセスに沿って業務は進行する。

 

 

 

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