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3.2 エンジニアリング支援のためのプロセスモデリング

本年度は、昨年度の研究成果を受けて造船業のエンジニアリング業務で行われている高度な協業を支援するために必要な、業務の実行手順(業務プロセス)をコンピューターシステム上に表現するためのプロセスモデルと、そのプロセスモデルを利用した協業支援メカニズムについて具体的に検討した。

その結果、高度造船CIMが目標とする協業支援機能を実現するために必要なプロセスモデルの基本構成と今後の詳細検討の方向性が明らかになった。

まず、3.2.1でプロセスモデルへの機能要件を明らかにするため、プロセスモデルで改善が期待される現状業務の課題について述べ、3.2.2で昨年度から踏襲してきたモデリング手法の限界を、3.2.3で新しいアプローチ手法によって検討したプロセスモデルについてその基本概念を述べる。

 

3.2.1 現状業務の課題の再整理

プロセスモデルの機能要件を明らかにしてより具体的な検討を行うために、これまでに挙げられているプロセスモデルによって改善が期待される現状の課題を再整理し、以下にリストアップする。

1] 情報収集や変更管理に関する課題:

・作業の手戻りを防ぐため、自分の業務に関連する作業の進捗や作業の内容を常に確認する必要がある。このため、作業に必要な情報収集に時間がかかる。

・設計者の間では、情報が未確定な段階から広範囲にわたって情報交換や調整作業が行われる。このため、設計が進んで情報の確定度が上がるにつれて、互いの設計情報の更新や修正作業が発生し、コミュニケーションが不十分な場合には矛盾が生じることもある。

・チームとして設計するので、設計者同士で情報を参照し合うが、互いの情報の依存関係が複雑に入り組んでおり、十分に把握しきれない。そのため、変更通知が不十分であったり変更個所の周知徹底に時間がかかる。

2] 設計知識の共有に関する課題:

・情報の確定度が低い段階では、過去の類似船の情報を参照したり、経験による予測に基づいて作業を進めることが多い。また、変更への対応手順はノウハウとして各設計者の頭の中にあり、結果として技術者の経験や知識に作業能率が大きく左右される。

3] 進捗管理に関する課題:

・技術者同士の情報交換や調整作業が同時並行的に行われるため、図面等最終的なアウトプットが出る前段階での進捗管理が難しい。マネジャーは進捗状況の把握と、遅れに対して効果的な手を打つため詳細な進捗状況を個別に聞き回っている。

 

 

 

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