プロセスモデルは、この後者の情報と知識、すなわち、設計・工作業務プロセスに関する情報と知識を表現するモデルであり、設計チームの作業計画と進捗情報の共有や設計ワークフロー管理システムの構築を可能とするものである。すなわち、本開発研究が目指している造船の高度な協業作業を効率良くシステム的に支援するためには、PMとプロセスモデルの両者を密接に連係させた協業支援システムの構築が必要である。
(2) プロセスモデル
プロセスモデルは一般にはワークフローモデルとも呼ばれ、一般のビジネスプロセスあるいはエンジニアリングプロセス(設計・工作の業務プロセス)をコンピューターが解釈可能な形で表現したモデルである。図3.1-1は、順序関係を持つ8つのアクティビティから構成される単純なプロセスモデルの例である。
通常、プロセスモデルは一連の作業(アクティビティ)のネットワークとそれらの関係情報、プロセスの開始・終了時間及び開始・終了に関する条件、各作業の担当者や関係する作業者、更にその作業で使用するアプリケーションやデータなどの資源情報へのリンク情報等から構成される。
現在市販されているワークフロー管理ツールの多くのものは、主として定型的なビジネスプロセスの管理を対象としており、これに必要な詳細度でのモデル化がなされている。また、事前に作業プロセスが完全に記述され、作業開始後も順序関係が変化しない静的なモデルとして定義されることを前提にしている。一方、本開発研究で目標としている技術者同士の高度な協業作業を支援するためには、市販ワークフロー管理システムより細かい粒度で業務プロセスを表現できるモデルの構築が必要である。更に、現実の設計作業においては、作業開始後、様々な要因により事前に定義した設計手順が動的に変化する。市販ワークフロー管理システムではこれらへの対応は難しく、造船業のような高度な協業作業を支援するためには、新たなプロセスモデルを開発する必要がある。