(1) 現状PDM製品の機能調査
前述のように、PDMの概念は非常に広範な機能を含むものであるが、代表的な2種類のPDM製品を調査しところ、現時点でPDM製品として市販されている製品はその概念のごく一部を実現しているに過ぎないことが分かった。現状のPDM製品が提供しているのは具体的には以下の機能である。
・データの保管・管理：
製品データの構造をメタデータとしてあらかじめ定義し、各製品データをVaultと呼ばれるデータベースに保管・管理する
・製品構成管理：
製品を構成する部品及びそのリビジョンなど、BOM(Bill OF Material)の管理を行う
・製品データ間の関連の管理：
製品データ間の参照・派生・親子関係などを管理する
・ワークフロー及びプロセスの管理：
製品データの作業中、レビュー・承認・リリースなどのステータスに基づき、データの生成プロセスの管理を行う
(2) 市販PDM製品の適用領域
現状のPDM製品では、(1)に示す機能を提供するうえでの基本となる管理単位が一般的にはファイルとなっており、アプリケーションが扱うより細かな単位での管理を行うような利用形態の実績はない。そのため、現状でPDM製品を適用している領域は、部品表による管理を前提とした機械系や定義済みの部品を組み立てるボトムアップ的プロセスが主なものとなっている。大量生産方式である自動車産業においても、設計分野にはPDMを適用していないのが実体であり、現状のPDM製品は、造船のような受注型一品生産方式の産業における設計や生産計画などの業務に適用できるまでには成熟していないことが分かった。
(3) 高度造船CIMへの適用
前述のように本来PDMの概念が目指しているのは製品に関する全ての情報を管理するというものである。これはエージェント技術を利用したプロセス管理と同一の方向性を持っており、今後エージェント技術をも取り込んだPDM製品が現れる可能性もあり得る。また欧州企業におけるPDMの調査で分かったことであるが、有力ユーザーがPDMベンダーに対して機能拡張を要望しているようであり、高度造船CIM実現時にはPDM製品の機能がかなり向上し、造船への適用が現実的になる可能性も高い。更に、将来的には検討を行っているプロセスモデルやエージェント技術などというものとPDMの概念が一体化して、PMを含む製品に関する情報全てを管理するような形になっていくことも考えられる。
