2.5 プロダクトモデル管理の実現
ACFの中でもPM管理支援が実用レベルのPMを造船所で運用していくうえで必要不可欠な機能であると2.3.9において位置付けているように、本開発研究では実用に耐え得るレベルのPM管理サービス群を提供することとしている。ここでは高度造船CIM実現時のPM管理の方向性と、構築するPM管理機能について述べる。
2.5.1 バージョン管理に関するニーズ調査
PM管理機能の中で最もユーザーに関連が深いバージョン管理、特にデザインオプション及びコンカレントな利用の支援に関して、2種類の検証用アプリケーションにおけるニーズを調査したところ特に反応はなかった。これは調査対象のアプリケーションについて次の理由によると考えられる。
・起動時にPMから操作対象とするデータをアプリケーション内に読み込み、アプリケーション側で操作を行った後に、結果をPMへ格納するという方式のものであったこと
・アプリケーション内で複数案を作成して比較を行った後に、結果をPMへ格納するという方式のものであったこと
・初期生産設計アプリケーションはその業務自体が複数人で行われることがほとんど無いこと
・工程設計アプリケーションはブロック単位で作業が行われ、一つのブロックに対して複数人が作業することが無いこと
しかし、設計関連アプリケーションと初期生産設計アプリケーションの間、あるいは設計関連アプリケーションの間ではコンカレントな利用が考えられ、また、設計関連のアプリケーションではPMに複数の案を保存した方が良い場合も考えられる。それで、この調査結果だけから不要と断定することなく今後も継続して検討を続けることとした。
2.5.2 製品データ管理に関する検討
利用可能な市販ツールはどんどんシステムに取り込んで利用するというのが高度造船CIM開発の基本方針であり、ACFの場合もその例外ではない。PMはデータだけでなく処理も含むなど一般的にデータと言われているものとは異なるが、管理という観点から見ると、PM管理は製品データ管理と言い換えることもできる。製品データ管理はPDM (Product Data Management)などと呼ばれ、ここ数年一種のブームとも言える状況で、それを目的とした製品も多数市販されている。
PDMとは、本来製品に関する全ての情報、例えば図面や文書、構成情報、更にはモデル情報などを対象に、アクセス管理やバージョン管理を行うシステムと位置付けられる。そのような機能が市販製品を導入することでカバーできれば、開発効率が大幅に向上するうえ、システム自体の完成度にも大きく寄与すると考えられる。そこで、PDM製品自体の機能の調査だけでなく、海外の先進ユーザーにおける適用状況やPDMに対する取り組みについても調査を行った。