日本財団 図書館


しかし、分散オブジェクト技術そのものは情報インフラストラクチャであり、これを効率的に利用するには何らかの仕組みがあることが望ましい。例えば、設計者が作業中にあるサービスを必要とする場合、設計者はそのサービス(アプリケーションプログラムなど)を提供してくれるオブジェクトの所在を確認し、所定の手続きでサービスを要求し、結果を受け取るということを自分で行わなければならない。これは非常に煩雑であるし、オブジェクトの数が増えるに従ってオブジェクトの探索コストは指数的に増大するため、スケーラブルではない。しかし、もしシステムが設計者の作業を観察していて、設計者がそのサービスを利用することを検出し、オブジェクトの探索からサービスの実行まで全て行ってくれれば、非常に便利である。設計者にとってはシステムが分散しているようには感じられず、全てのサービスが自分のマシン上にあるかのように感じられる。

造船業務の大規模性や複雑性を考えると、システムへの参加者あるいは公開されるサービスも極めて多数に上ると想定される。このような分野へ分散オブジェクトシステムを展開するためには、先に述べたように人間の作業状況なども含めたシステムの状態を常時監視し、適切な支援を施せるような機能が必要となる。

また、実際には造船業務のコアとなる知識や経験は作業者の頭の中に入っており、状況判断や次に取り得る動作の決定は人間が行うことになる。これをシステム的に支援するには、人間が意思決定をするために必要とする情報を取得したり、他の人間とのコミュニケーション手段を提供することが有効であると考えられる。これはサービス間でも同様であり、あるサービスを行うためには別のサービスに情報を問い合わせる必要があるということが往々にして起こる。このような場合に、サービス間に通信機能が提供されることは望ましいことである。

以上述べたように、ACIMリファアレンスアーキテクチャでは分散環境下に散在する人間やサービスといったオブジェクトの状態を監視・判断して適切な支援を提供しつつ、それらの間に通信機能を供するようなミドルウェア的な仕組みが存在すれば、円滑な運用が可能になってエージェントがこの役割を担えるものと考えている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION