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エージェントについて統一された定義があるわけではなく、研究者の数だけ定義があると言われる状況であり、それらに共通するエージェントの特徴を挙げると以下のようなものがある。

1] 自律性:

エージェントは人間の直接の介入なしに振る舞うことが可能であり、自身の動作や内的状態を何らかの形で制御できる

2] 社会性:

エージェントはある種の通信言語を介して他のエージェント(あるいは人間の場合もあり得る)と通信する

3] 反応性:

エージェントは環境(現実世界であったり、グラフィックスインタフェースを介したユーザーであったり、インターネットであったりする)を知覚し、その変化に即時に対応する

4] 積極的な行動:

エージェントは、環境に単純に反応するだけでなく、自身の有するゴールを志向して動作する

このような特徴を持つエージェントという考え方そのものは、情報処理技術に限定されたものではなく、元々は人間の思考を説明するために考え出されたものである。この背景には、人間の思考は知識の集積で実現可能であるというトップダウン的な従来の人工知能アプローチの失敗がある。これに対して、心の中の小さく単純なプロセス(エージェント)を数多く用意し、それらの相互作用として複雑な人間の思考を解明しようというのがエージェントアプローチである。このアプローチは人間の思考の解明のみならず情報処理技術への展開も数多く試みられており、ソフトウェアエージェントという分野などで盛んに研究が行われている。

 

2.4.3 分散オブジェクトシステムの効率的運用へのエージェント技術の適用

ここでは、ACIMリファレンスアーキテクチャに基づく分散オブジェクトシステムの効率的運用という観点からエージェント技術の適用について述べる。分散オブジェクト技術の特徴は、大規模なシステムを柔軟に管理できるということであり、基本的な機能を提供するサービスはオブジェクトとして実装され、ネットワーク上に公開される。新たなサービスの付加、既存サービスの保守といった管理作業は比較的粒度の小さいオブジェクト単位で個別に行うことができるため、システム全体に影響を与えることなく柔軟な管理ができる。また、サービス処理の負荷をネットワーク上のコンピューターに分散することができるため、単独のマシンの場合よりも高性能を期待できる。更に、これらオブジェクトをネットワーク経由で組み合わせることにより、全体として高度で大規模なサービスを提供できる。

 

 

 

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