2.4 エージェント技術の適用
エージェント技術はACIMリファレンスアーキテクチャのACFカテゴリーに含まれるファシリティであり、本開発研究が目指す協業支援環境を実現するうえで必須のものと位置付けている新しい情報技術である。昨年度はエージェント技術について広く調査し、その一般的な特徴を明らかにしたが、本年度は、エージェント技術を高度造船CIMにどのように適用していくかについて具体化を図った。
本節ではまず、2.4.1で本開発研究へのエージェント技術導入の目的について述べ、2.4.2でエージェント技術の一般的な特徴を再吟味する。次に2.4.3で分散オブジェクトシステムの効率的運用へのエージェント技術の適用について述べる。
2.4.1 エージェント技術導入の目的
エージェント技術は、自分がおかれている環境を常に監視し、発生した事象に対して自立的に反応するソフトウェアと言うことができる。また、エージェントはある程度の知性に基づいた判断が可能である。このような機能を持つエージェント技術の高度造船CIMへの導入目的は次の通りである。
(1) 分散オブジェクトシステムの効率的運用
高度造船CIMは分散オブジェクト技術に基づいた大規模なシステム環境である。このような大規模分散システムを効率よく運用するためには、対象とするオブジェクトの自動検索やアプリケーション利用手順のガイダンス提示などの運用支援機能が必要である。本開発研究では、高度造船CIMを利用するユーザーとシステムとのインタフェースであり、システムの様々な機能をユーザーに提供する環境である「ACIMデスクトップ」を提案することとしている。これにより先に述べた大規模分散システムの複雑さを意識しないでACIM環境で作業することが可能となる。
ユーザーはデスクトップを介してシステムとインタラクションを持つ。エージェントはデスクトップで起こる全てのことを監視し、それを通して作業者の状態を把握する。これにより、エージェントはユーザーがこれから何をしようとしているのかを推測し、上に述べたような適切な運用支援を行うことが可能となる。
(2) プロセスモデルを用いた協業支援
本開発研究で目指すプロセスモデルを用いた協業支援の中核技術としてエージェント技術を位置付けており、詳細は3.3で述べる。
2.4.2 エージェント技術の一般的な特徴
エージェント技術一般に関する詳細な調査報告は昨年度の報告書に詳しいが、その主な特徴について再記述する。