本開発研究で利用しているIONA社のCORBA製品であるOrbixのみが市販ツール(PDM、ERP等)との連携が可能で、事実上の標準CORBA製品となっている。CORBA仕様の拡張は引き続き行われており、1999年上期に規定される予定のCORBA3.0では、非同期通信(サーバーの処理結果を待たずに次の処理を開始できる)、CORBAコンポーネントの開発を促進するための規約整備がなされ、分散オブジェクト環境をより容易に構築できるようになる。
(3) DCOMの概要
(a) DCOMの特徴
マイクロソフト社独自の分散オブジェクト技術仕様であるDCOMは、「ソフトウェアのコンポーネント化によるアプリケーションの品質及び生産性の向上」を主な目標としている。CORBAと比較してDCOMは次のような特徴を持っている。
(ア) 仕様の独自性
マイクロソフト社の独自仕様であり、実装仕様まで規定している。
(イ) バイナリー互換性の確保
CORBAがIDLを介してオブジェクト間のインタフェースを取るのに対して、DCOMでは実行形式(バイナリーファイル)で直接クライアント側とサーバー側のコンポーネントがインタフェースの整合を取る仕組みとなっている。
(ウ) マルチメディア情報への対応
DCOMではマルチメディア情報(音声や動画データ)への対応が可能である。
(4) DCOMの最新動向
主として米国において、Windows対応の汎用コンポーネントウェアが流通しつつある。それらは単機能のクラスライブラリにとどまらず、ビジネスアプリケーション構築に有用な高機能なものが開発されつつある。既にCORBA規格にはDCOMとの相互運用に関する規約が決められており、DCOMはCORBAと対立する環境ではなく、分散オブジェクト環境の名の下で統合的に捉えるべきものである。今後Windows NT(Windows 2000)上でのActive Directoryの充実に伴いDCOMも本格的に広域的環境(インターネット環境)への適用が進むと推測される。
以上のように、分散オブジェクト技術CORBAはネットワーク上に分散された知識と情報を共有し協業を支援するためのシステム的枠組みを構築するうえでの重要な基盤技術である。マイクロソフト社の分散オブジェクト技術であるDCOMとの相互連携も図りつつ、ソフトウェアコンポーネントの新規追加や既存アプリケーションと連携することにより、拡張性を持った高度造船CIMの構築が可能となる。