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5. IST'95

IST'95は、内外の有識者を集めて、1995年11月東京で成功裏に開催された。INSROP Phase I成果を海外に公表し、北極海及び北極海航路の理解を深める共に、ペレストロイカ以後急速に変わりつつあるロシアの関係法制や行政の現状を学び、かつ、広く海運に関わる西欧社会の市場原理についてロシア側の理解を深めてもらう意図は充分達成された。

本シンポジウムでは、4つのサブ・プログラム毎に行われた各セションの座長により、各分野成果が取りまとめられ、藤田譲委員長による、INSROP Phase I成果の総括、展望発表を以って閉会した[14]。

 

6. INSROP GIS

地理的情報システムGISは、我が国においても様々な分野で研究が進められつつあり、今後のさらなる電算機の進歩を想定すれば、将来の情報システムの主体となるものと言える。INSROPにおいては、ノルウェー及びロシアがその開発、整備を担当し、自然環境情報、生態系情報等が入力され、生きたデータ・ベースとして、NSR運航への利用を始めとして、様々なGISとの結合や拡張、変貌が想定され、今後の幅広い活用が期待されている[15]。

 

7. 航行シミュレーション

INSROP Phase II事業の内、我が国主導による研究事業である。次のような作業過程を経て航行シミュレーションを行った。

・氷況、海象資料、水路状況等を考慮して、4通りのNSR航路を選定する。

・選定航路沿いの気象、氷況等の自然環境データを取りまとめる。

・選定航路による貨物輸送を推定、分析する。砕氷船支援、保険等各種料金を算定し、運航コストを総括する。

・上記の各資料を基に、独航期間を想定した上でNSR最適貨物船を設計する。

・ロシアSA-15型砕氷貨物船を主体とするNSR航海経験資料を取りまとめ、最適船の評価情報として活用する。

・選定航路における氷況等のデータを用い、最適船の氷海航行速度のシミュレーションを行う。

・ロシア法制の面からシミュレーションを評価し、環境影響評価を行う。

・上記の作業により得られたデータ、資料を用いて航行シミュレーションを行い、コスト分析、法制と環境影響評価、海運市場へのインパクト等を吟味の上、国際商業航路としてのNSRの評価を行う。

この航行シミュレーションにより、国際商業航路としてのNSR啓開の要件を個々に鮮明にクローズアップすることができ、INSROP成書執筆計画Box Aが事業の集積積分的性格、評価を担うのに対して、航行シミュレーションはINSROPの微分的、分析的評価を担うものと評価することができる。

 

8. INSROP成書事業

航行シミュレーションの成果を含む、INSROP全事業をPhase Iにおけるサブ・プログラムに従って総括し、NSRの総合評価を行い、真の啓開に向けての具体的な提言を行う。

現在、各章担当者からの原稿が近々出揃い、日本、ノルウェー、ロシア3ケ国の編集責任者3名による最終取りまとめが間もなく行われる。

 

 

 

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