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船級協会アイス・クラスについては、IMO傘下の作業として、各船級協会規則の調和、調整作業が進行中であるが、現在のロシア側の見解では、環境汚染リスク税(P&I)はこれらの船級協会規則に則って設計、建造され、然るべき定期検査を満足する船舶については免税扱いとなる。

船体保険については、船種、アイス・クラスによって、額を異にすることは理解できるものの、ロシア側から提示された料金体系は、料金が極端に高く、現在再考あるいは再検討を促している。

砕氷船航行支援に関わる経費についても概略のガイダンスはあるが、多様な実際運航パターンに照らしてみると細目において解釈にF惑う部分が多い。砕氷船経費は当然のことながら、NSR運航船舶隻数に依存するから、成熟した航路となれば、現在想定経費は大幅に低減することは間違いない。

 

3.10 国際物流からの評価

近年の国際物流は流動性が高く、一般論としても明確な答えを求めることは至難である。

まして、物流実績のない将来航路について予測を行うことは難しいが、物流あっての航路であるから、INSROPでは関係国専門家による物流予測が行われ、少なくとも否定的ではない結論を得ている[11]。

 

3.11 地域開発のシナリオ

地方に賦存する資源、社会組織、経済成長、輸送網整備、原住民を中心とする文化圏の構成等について調査が行われた。現在では、ロシア経済及び社会の混乱、連邦政府の弱体化、外資導入と税制の対立、地方自治拡大の動きのため、地域振興のシナリオを見極めるには無理がある[12]。

ロシアの混乱がある程度までに収まり、市場経済への理解が普及すれば、当面資源開発を基調としてではあろうが、NSR沿いの各地方の開発、振興が徐々に進められるものと予測している。

NSR航路沿いの地方での経済活動活性化は、NSRの健全な発展の基本条件でもある。

 

4. 実船航海試験

1995年8月、INSROP協力事業として、日本財団の支援を受け、ロシアのSA-15タイプ多目的型砕氷貨物船Kandalakshaを傭船して、シップ・アンド・オーシャン財団による実船航海試験が行われ、横浜キルケネス間を短期間(8月1日〜28日)で航行し、NSRの効用が検証された。本船はロシア貨物船としては最強のアイス・クラスULAを有する。試験は、山ロー東大助教授を団長とする内外の造船、海運業界の代表的専門家からなる試験グループを組織して行われた。

本航海では、将来のNSR航行船舶の設計建造及び運航に関わる様々な問題が実地に調査検討され、途中、補給物資の調達や、氷中性能試験を行うに相応しい氷海、氷盤を求めて北上し、本来の想定商業航路を大きく外れたこともあうて、この航海時間は参考データに留まるが、そのようなロス時間を含めてもなお、所要航海時間の短さには注目される。

初めて西欧社会の市場原理と最新技術の目を以って実施された実験航海により、将来の航行保全に必要なインフラストラクチャーの整備を前提として、図・12に示すような、より安全かっ経済的な航法、意識的な操船が可能となり、北欧と極東アジアを最短時間で結ぶ安定した商業航路の可能性を認識できた[3]。

 

 

 

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