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3.4 緊急時対策と体制

少なくとも、現在NSR沿いに国際的に開かれた港は2港に留まる。順次、開港の計画はあるが、それらが何時開港され、そして国際港として相応しい港湾施設の整備がどのような規模で実施されるかは不明である。国際的水準にある救難システムを約束してはいるが、救難体制についても、救難要請から実行に至るプロセスに不透明なところがあり、一抹の不安が残っている[4]。

 

3.5 NSR船舶

貨物として何を、どこからどこまで運ぶのか必ずしも明確ではないことから、NSRに相応しい船舶設計には暖昧さが残る。これは、NSR航路沿いでは、バレンツ海でのエネルギー資源など、現在開発が進められつつあるものや、開発が予定されてはいるが未着手のものばかりであること、卓越した貨物が見当たらないこと、ロシアにおける港湾整備並びに荷役設備に問題があること、などによる。

Phase Iにおける研究成果とPhase IIにおける調査結果を勘案し、航行シミュレーションに必要なNSR評価用船舶として、図・6(40,000DWT)、表・1に示すような2船種を選択、概念設計を行った[5]。貨物としてはFCL貨物(full container load cargo)とすべきか、LCL貨物(less than container load cargo)と考えるべきか、然るべき判断材料を欠いたことから、妥協の産物となっている。船体構造設計については、詳細な損傷事故解析結果を利用すべきではあるが、損傷記録の詳細は未公開であることから、船級協会規則による検討を行った。

NSRが商業航路として成熟した暁には、様々な船種の船舶の運航が見られようが、当面NSR船舶として考え得るものは、航路水深の制約と現有砕氷船団の船幅、能力により、ある範囲に限定される。従って、このような条件から導かれたNSR船舶が、世界の海運市場から見て、充分な競争力を持ち妥当なものであるかどうかは若干疑問が残る。

異種交通機関との結合による国際複合一貫輸送とNSRが無縁な存在ではあり得ず、国際物流の観点からより厳密な検討が行われるべきであろうが、これは検討に足るNSR物流が実現した後の検討となろう。

 

3.6 港湾整備

航路沿いの港湾整備については、既に述べたように、インフラストラクチャーの面での最重点課題の一つである[6]。

港湾は、殆どの場合、国際物流の場としての流通機能を持つ社会経済的性格を持ち、都市、集落の開発計画と密接に関係する。西欧においては、港湾における技術革新は1970年代に始まり、物流機能を重視する運輸政策、都市政策に支えられ、港湾施設の機械化、自動化が進み、多様な情報が集中する拠点としての情報化時代を迎えている。港湾貨物情報ネットワークシステム(SHIPNETS)もその一つであるが、NSR沿いの港湾整備についても、先ずこのような観点からの港湾整備政策の策定が急務であろう。

 

3.7 氷海航法

NSR航行経験については、全航程を踏破したものではないが、大航海時代から連綿として記録が残されている。氷況の厳しいNSR東半分にまで探査が及んだのは、18世紀Beringによる2度の探査である。古典的な航法に基づくものでは、NansenによるFram号の航海[7]は特例として、Nordenskioldによるvega号(1879年)が名高い。

 

 

 

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