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3. 北極海航路啓開の要件

恒久的な商業航路として成立するためには下記の要件を満たす必要がある。

1) 想定航路に対する充分かつ信頼性の高い水路調査資料があり、利用できること。

2) 航行保全上の支障、懸念を起こさない程度に航路周辺における気象・海象状況が把握されていること。

3) ハード、ソフト両面における航行支援システムが確立されていること。

4) 緊急時の避難、救難体制が確立していること。

5) 想定航行海域での安全航行を保証できる船舶の設計・建造が可能なこと。

6) 想定航行海域での航法が確立していること。

7) 国際港としての港湾の整備が充分であること。

8) 航行に伴う環境影響評価が確定していること。

9) 法制、保険、税制の面での採算性、経済性の条件が満たされること。

10) 国際物流の経済的評価に耐えるものであること。

これらに加えて、航路が安定して発展するための要件として、NSRでは、

11) NSR航路沿いにある未開発地域の開発振興シナリオの妥当性が問われる。

INSROPは正しく上記の課題を調査検討した事業であり、端的に表現すれば、Phase Iでは、要件についての現状認識とNSR実船航海試験による認識確認が、またPhase IIでは、事業成果を総括した上で商業航路としての啓開のシナリオを具体化し、啓開にとって支障となる問題を明確に提示するための事業が行われた。

 

3.1 想定航路

図・2に示すように、欧州・極東アジアの直行航路及びシベリア各地を経由する沿岸航路を調査資料に基いて候補航路を定め、その妥当性を検討した上で選定した。ロシア極東域には様々な天然資源が豊富に賦存することが知られている。厳しい開発条件を克服する技術的、経済的条件が整えば、将来これらの資源に開発の波が押し寄せる可能性がある。

特に天然資源に恵まれない我が国にとっては、将来NSR東半分に賦存する様々な資源活用への期待もあり、沿岸航路の可能性検討は直行航路以上に意義がある。さらにNSR航路の健全な発展は、欧州・極東アジア両端を短絡する運航だけでは成り立たず、航路沿いの地方都市の発展、主要港の整備振興が不可欠であり、この観点からも沿岸航路への期待は大きい。ただし沿岸航路については、現状では、環境保護上あるいは防衛上の立ち入り禁止海域が点在し、信頼に足る水路調査資料の空白域が存在することも事実である。実際運航時には周辺氷況のモニタリングによる最適航法が採られ、選定航路から外れて運航されることが一般であろうから、この点問題なしとは言えない。

想定航路沿いの水路調査の現状は、総じて航行に支障を来す恐れはないと考えてよいレベルにあるが、想定航路を大きく外れた場合には水路情報に不備が窺えること、沿岸域では、波浪や海氷の作用を受けて、海底砂州や段丘の形成、氷盤による洗掘等があり、水路調査は定期的に継続されねばならないが、今後しばらくはどの程度水路調査に努力が払われるか懸念のあるところである(例えば[3])。

 

 

 

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