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(1) パッシブマイクロウェーブセンサ

DMSP衛星のSSM/IセンサやNimbus-7衛星のSMMRセンサがある。自然に存在するマイクロウェーブ(波長0.3〜30cm)を氷が反射したものを計測する。マイクロウェーブを用いるので、雲があっても観測できる。センシングする波長の関係で、氷況の観測にはSSM/Iセンサの方が適している。氷質によって波長と放射率の関係が異なるので、例えば一年氷と多年水を区別することができ、それぞれの密接度を得ることができるが、それ以上の情報は得られない。しかし、氷海航行に重要となる氷厚は、氷質からある程度推定することが可能である。

SSM/Iの場合の観測範囲は幅1,394kmと非常に広い。ごく最近は、二年氷の中でも、New Ice, Young Ice等に区別できるという報告もある。少なくとも原理的には十分可能なことであるが、氷質決定のための係数を海域ごとに決めるなどの工夫が必要であろう。解像度が25kmと低いが、数日先までの大雑把な航路を決定するという目的には使用可能である。即時性を問題にしなければ、データがInternetで無償で公開されており、数値データが得られるため、予測計算の初期値として使用し易い。昨年度のオホーツク海の試計算にもこれを使用した。SSM/11センサによる画像例を、図3.2.2に示す。

(2) アクテイブマイクロウェーブセンサ

計測原理は上と同じで、雲があっても計測可能である。マイクロウェーブを衛星から発射して、その反射波を計測する。いわゆる資源探査衛星に搭載している合成開口レーダー(SARセンサ)が、氷の観測に使用される。分解能が非常に高く、原理的には水質の詳細まで観測できるが、データ解析のアルゴリズムはまだ開発段階にある。従って、一般に手に入るのはモノクロ写真相当で、それも有償である。

ERS-1,2(ヨーロッパ)やJERS-1(日本)のSARセンサが有名だが、観測範囲が狭い(約100km以下)のが難点であった。しかし、数年前にカナダにより打ち上げられたRADARSATのSARセンサは7つのモードを持ち、最も広いモードでは幅500kmをカバーすることも可能である。そのモードの時は最も解像度が低いが、それでも100mの高解像度を有する。殆ど一日太陽照射を得られる衛星軌道をとっているため発電効率が良く、北緯70°以北のほぼ全域を毎日カバーすることが可能であるもSARセンサによる水況画像例として、JERS-1によるものを、図3.2.3に示す。サロマ湖を右下に含む、北海道東北沿岸域の画像である。

(3) 可視光、赤外線センサ

NOAA搭載のAVHRRセンサやLANDSAT搭載のTMセンサが代表的である。前者は観測範囲が広く(幅約2800km)、後者は解像度が高い(30m、120m。観測幅は185km)。データも手に入りやすいが、雲があると氷は観測できない。また、氷質の識別もできない。要するに、宇宙から目で見ているのと同じである。この画像例を、図3.2.4に示す。サハリン南部から北海道全域を含む画像である。

 

以上の様に種々の衛星データを検討した結果、今回の計算の初期値及び比較すべき観測データとして用いる衛星氷況データとして、下記2つのデータを候補とした。

(1) 米国DMSP,衛星のSSM/Iセンサによるデータ

(2) カナダRADARSAT衛星のSARセンサによるデータ

 

 

 

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