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(4)Bi系超電導線

Bi-2223超電導線はフレキシブルな構造を持つ多芯の銀被覆線(テープ材)が開発され、1000mを超える長尺化が可能となっている。長尺線の臨界電流密度の例としては長さ114mのもので27800A/cm2、長さ1200mのもので17800A/cm2 が得られている[16]。銀被覆Bi-2223超電導線における臨界電流密度の磁界方向に対する異方性が検討され、有効コヒーレンス長を用いた理論モデルにより磁界方向依存性の説明が試みられた[17]。この理論モデルから、任意の方向の外部磁界Bのもとで臨界電流密度がテープ面に垂直な磁界成分Bnのみによって決定されると予想された。これを検証する実験の例として、図3.3.14の角度θrを種々に設定し測定したB-JcおよびBn-Jcがそれぞれ図3.3.15および図3.3.16のように示されている。図3.3.15のB-Jcでは角度θrが60度を越えると臨界電流密度が大きくなり、磁界の方向に対する異方性がみられる。一方、図3.3.16のBn-Jcでは角度θrに依存していないことから、臨界電流密度がテープ面に垂直な磁界成分Bnのみに依存し平行な磁界成分に依存しないことがわかる。

電力ケーブルへの応用を目指すものとしては、図3.3.17のようにフォーマ上に銀被覆Bi-2223超電導テープをスパイラル状に巻き付け積層した構造の導体による図3.3.18のような長さ7mの3芯一括型ケーブルが開発された[18]。このケーブルでは主に断熱管での渦電流損失を抑制するため導体の周囲に銀被覆Bi-2223超電導テープをスパイラル状に巻き付けた磁気シールド層を設けている。また、図3.3.19のような長さ50mの3000A長尺ケーブル導体も開発されている[16]

Bi-2212超電導線は臨界温度が85KとBi-2223超電導線に比べ低いが、30K以下の低温では図3.3.20に示すような優れた磁場特性が得られてれている。Bi-2212超電導線は低温・高磁界マグネット用線材への応用が検討されているが、これを実用線材として用いる場合には、強度向上のためのシース材の検討、長尺線材の均一性の向上、I-V特性のn値の向上など解決すべき問題が残されている[19]

Bi系超電導線の臨界電流に対する歪みの影響を試験した結果の一例として、臨界電流が90%に低下する歪みと超電導体体積率の関係が図3.3.21のように示されている[20]。超電導体体積率の減少に伴う耐歪み性向上の傾向があると指摘されている。

(5)Y系超電導線およびT1系超電導線

Y系超電導線については、主に気相法を用いた方法によりフレキシブルなテープ状線材の開発が進められ、これまでに表3.3.5に示すような線材の構成および2軸配向性導入方法が提唱されている[21]。気相法テープ線材の開発例として、図3.3.22に示すようなイオンビームアシスト蒸着法(IBAT法)により、図3.3.23のような短尺Jc-B特性の線材が製作された[22]。この場合、超電導層の厚さは0.5〜2μmである。連続合成により長さ1mの線材が製作され、2×105A/cm2(77K)の均一臨界電流密度分布が得られている。このY系超電導線は、液体窒素温度における臨界電流密度の磁界特性が優れていること、テープ形状のため低交流損失を期待できること、などの特徴がある。また、圧延と熱処理によって冶金学的に2軸配向したNiテープを用いるRABiTS法でも高Jcのテープ線材が製作され、幅3mm長さ15mmの線材で図3.3.24のようなJc-T-B特性が得られている[23]

 

 

 

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