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また、Nb3Sn超電導線は臨界電流に対する歪みの影響が大きいので、従来のCu安定化材をCu-Nb補強安定化材に置き換え、0.2%耐力を1.8倍とし224MPaの電磁力に耐えるようにしたNb3Sn超電導線の開発例が報告されている[7]

最近のNb3Sn超電導磁石の開発では、内部拡散法や変形ジェリーロール法の線材で電流密度が向上し、ダイポール磁石製作[8]への期待がようやく高まって来ている。

超電導電磁推進船や加速器で用いられるダイポール型コイルに関しては、米国ローレンスバークレー研究所(LBL)で高磁界実験装置で13.5Tの発生に成功しているが[9]、実用化に向けてはまだ開発が必要である。素線間の接触抵抗[10]、巻き線技術、絶縁技術、エポキシ含浸などが課題であるが、Nb3Snコイルとしての挙動には不明な点も多く、クエンチ伝搬速度の測定実験などが高エネルギー加速器研究機構と当財団で行われている。[11]

 

(3)Nb3Al超電導線

Nb3Al超電導線は、Nb3Snに比べ臨界磁界が高いこと、および応力や歪みによる特性劣化が小さいことから、Nb3Snに替わる金属間化合物として期待されている。図3.3.8に示すようなジェリーロール法により製作した表3.3.3のようなNb3Al超電導線において、図3.3.9および図3.3.10に示すような臨界電流密度特性が得られている。Nb3Al超電導線とNb3Sn超電導線の臨界電流密度に対する歪みの影響は図3.3.11のようであり、Nb3Al超電導線のほうが歪みによる劣化が少ない。大容量導体としては、46kA(11.2T)の通電に成功した長さ1.7mのケーブル・イン・コンジット導体、12T-10kA-100m級導体、およびITER用の12.2T-6.92K-36.2kA導体(表3.3.4)などが製作された[12]

16〜24Tの高磁界中で適用可能なNb3Al超電導線の実用化を目的に、ジェリーロール法線材に急熱急冷処理および変態熱処理を施す方法(急熱急冷・変態法)の開発が進められている[13]。図3.3.12は急熱急冷処理装置の概略図であり、ジェリーロール法線材を真空中で連続的に約2000℃まで通電加熱し、直ちに50℃の金属Ga浴中で急冷することによりNb/Al過飽和固溶体線材とする。それに、800℃程度で変態熱処理を施しNb3Al超電導線を得る。図3.3.13は急熱急冷・変態法によるNb3Al超電導線の臨界電流密度を、比較のためTi添加ブロンズ法Nb3Sn超電導線の臨界電流密度と共に示している。また、急熱急冷・変態法Nb3Al超電導線を温度1.8Kに冷却した場合には、磁界23.5Tのもとで臨界電流密度200A/mm2のような高磁界通電特性も得られている[14]

そのほか、σ相(Nb2Al)とNbの粉末を出発材料に用いた拡散反応でσ相やNbAl3の生成を抑制する方法により、臨界電流密度41A/mm2(4.2K、20T)が得られている[15]

 

 

 

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