今回は兵庫県の宍栗広域消防事務組合消防本部を取材させていただいた。当本部が管轄する宍粟郡は、兵庫県の中西部、姫路市の北西に位置しており、山崎町、安富町、一宮町、波賀町、千種町の五町で構成されている。管内面積は県内最大の七一八・九km2で、その約九〇%は山林で占められている。本部のある山崎町は古くから山陽と山陰の交通の要衝として栄えており、人が住みついてから四〇〇年以上もの歴史がある。町立図書館の二階には歴史郷土館が併設されており、優美な姿をした弥生時代の青木銅鐸等が展示されている。また、図書館の周辺には陣屋門・土塀・石垣があり、商店街やその周辺にも食い違いの十字路や鍵の手の曲がり角など所々に江戸時代の城下町の面影を止めている。管内の他の町には、関西一のナイターゲレンデを持つスキー場や自然を生かしたレジャーゾーン等があり、四季を通じて楽しめるようになっている。
広大な管轄面積を持つ当本部は、昭和五三年四月、前身の山崎町消防本部から、郡内五町を構成町とした消防本部になった。現在、一本部、一署、一分署、二出張所、消防職員七二人の体制である。平成一〇年中の災害状況は、火災二五件、救急一、四〇六件、救助二二件であった。最近は救急が増加の傾向にあり、高規格救急車の導入や救急救命士の養成に力を入れている。
● 一宮町の山津波
過去の大災害には一宮町の山津波がある。五二世帯、二四三人に被害が出た。これは台風による豪雨のため、推定百万トンの土砂が崩れ落ちたもの。地域の大半が赤土に埋まり、集落は跡形もなく消えた。しかし、この災害での死傷者はゼロ、消防団員らが避難勧告をしながら、各家を見回ったことなどが幸いした。これ以後、山津波は発生していない。
● 山崎断層対策
兵庫県は阪神・淡路大震災が発生し大きな被害を受けた。ここ宍粟郡でも郡南部を縦断する全国有数の活断層山崎断層が走っている。山崎断層は、岡山県勝田町から兵庫県三木市にかけて走る総延長八〇kmの断層で、大原、土方、安富、暮坂峠、三木の各断層で構成されている。管内の安富断層の周期は千数百年から二千数百年といわれており、前の地震から千百年以上が経過していることから、地震発生の危険性が指摘されている。
当本部では、地震対策用資器材の整備、震災マニュアルの整備、関係機関との応援協定を重点に対策を進めている。これらの対策の中には、コンクリート協同組合や建設協会との協定もあり、災害時には消防用水の搬送や重機等の提供をしてもらうことになっている。
● 独自の中高層建物対策
当本部では、中高層建物での災害に対処するため、管内の事業所と協定を結び対応している。これは、当本部に梯子車が無いため、中高層建物で災害が発生した場合には、事業所からクレーン車等を派遣してもらい、バスケットを取り付けたりして利用するもの。予防運動時には、訓練を兼ねて演習を行っている。(写真参照)