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は、生年月日、家族状況、既往症等かなりプライバシーに踏み込んだ調査をするため、消防隊員が単独で訪問した場合に、お年寄りに余計な警戒感を与えてしまう可能性があり、この活動の意義が失われてしまうのではないかという危惧があった。そこで、この老人世帯を定期的に訪問しているホームヘルパーに同行を依頼し、お年寄りとのコミュニケーションを図りながら防火診断を進めている。

この防火診断では、室内の火気設備、電気器具等の点検に加えて、火災が発生した場合の対処方法及び避難方法、緊急時の通報要領等の説明も行っており、年々お年寄りの方に好意的に受け入れられるようになってきている。なお、診断結果は各町にも報告し、問題点の改善が出来るよう指導している。

また、春と秋には一般家庭防火診断を管内の全世帯を対象に、その地区の消防団及び婦人防火クラブの協力を得て、二八年間にわたり実施している。この際、防火チラシ、パンフレット等を配付しながら、消火器の取り扱い方法、正しい一一九番通報の仕方等を指導している。この活動により、各家庭の消火器保有率は約七割に増加し、防火意識が高まってきているのが伺える。

当本部では、老人世帯が増加している現状を踏まえて、これらの活動のより一層の充実、強化を図っているところである。

 

二 林野火災用通報案内板

当管内の約七割は山林地帯で、山菜の宝庫でもある。特に、春の山菜シーズンにおいては入山者が急増し、林野火災発生の機会が増え、平成元年には約二〇haを焼失する大規模な林野火災が発生している。

当管内の広大な山林地帯で林野火災が発生した場合、通報に対し現場把握が非常に困難で、初動体制に著しく支障をきたしていたところである。このことは、数多くの林野火災において頭を悩まされてきた事であった。

そこで、この問題を解決するため、「林野火災用通報案内板」を山林の四九か所に設置した。職員が手作りしたこの案内板には区域番号、「山火事防止」の文字、更に、入山者の目をひくよう防火イラストも描きこまれている。この案内板により、通報から現場把握までの時間短縮がなされたのはもちろんのこと、円滑な初動体制並びに指令体制が整えられ、なおかつ、入山者に対し林野火災防止の呼びかけが出来るとともに、山岳遭難防止の一助といった様々な効果が現れている。

 

三 住民一人ひとりへの予防広報

春と秋の火災予防運動期間中には次の様な予防・広報活動を実施している。

◎ 消防車両による消防団と合同の防火パレード

◎ 幼年消防クラブによる街頭防火パレード及び通園時の法被着用

◎ 町広報誌及び各町会の放送設備を利用した防火広報

このように「火の用心」の大切さを呼びかけ、更に当務隊による積極的な巡回広報を展開している。

また、管内の小学校六年生を対象に「防災意識調査」を実施している。このアンケート調査は学校及び各家庭の協力を得ながら実施しているもので、災害時の初期対応等について調査をお願いし、約九五%の回答を得ている。

これらの活動を更に積み重ね、地域住民一人ひとりの防災意識の高揚を図っていきたい。

 

四 おわりに

近年の当管内の火災状況は、住宅火災が約四割を占めている。高齢化が進み、老人世帯が増加することで、今後、住宅火災の占める割合が益々高くなることが懸念される。そこで、これまでの活動で得た地域住民との信頼関係をより一層深め、地域に密着した予防・広報活動を展開し、火災のない町づくりに取り組んでいきたい。

(福士 順蔵)

 

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