さらに、川底の要救助者を覆っている護岸部分と右岸の護岸の間に油圧ラムシリンダーを、また、上部に油圧スプレッダーを挿入し、必要なスペースの確保をしたのち、角材で間隔を固定、要救助者及び隊員への崩落を防いだ。要救助者の救出は上部から進入、縛帯を装着させ頸部を固定して引き揚げ救出した。
救出された男性(A)は、意識レベルJCS三〇〇、自発呼吸なし、脈拍総頸動脈にて微弱、四肢変形等はなし、デマンドバルブで補助呼吸を実施し病院へ搬送。
同時に工事関係者の供述をもとにし検索活動をしていた別隊及び地元消防団員がもう一人の要救助者の身体の一部分を発見。
この要救助者の救出については、工事関係者のパワーショベルを活用し、崩落したコンクリートブロック及び石等にワイヤーを懸け慎重に除去、また人力にて土砂を取り除くなど連携し救出活動を進めた。
要救助者は石垣と石垣の間にうつ伏せの状態で土砂に埋まっており、その上にコンクリートブロック(縦一二〇cm、横一六〇cm)がのっており、そこから要救助者を救出した。
師走の日没は早く、照明を用いながらの約二時間三〇分に及ぶ救助活動を終えた。要救助者の男性(B)は、すでにCPA、CPRを実施しながら医療機関へ搬送した。
この教訓から、災害現場へ進入できない消防車両の活用、現場で救助活動を容易にする資機材の確保等などその後、我々の救助活動に数多く生かされている。
おわりに
近年、災害も複雑多様化し消防の果たす役割は益々重要になってきている。消防体制はもとより装備等の充実など強化を図らなければならない。
特に、この事例を踏まえ救急救助活動で最も重要で究極の目的でもある「救命」を常に念頭におき、各関係機関と一致協力し一人でも多くの尊い人命を救えるように取り組んで行きたい。
(駒谷 英夫)
予防・広報
地域に密着した予防広報活動の展開
平賀・尾上地区消防等事務組合消防本部(青森)
はじめに
当本部は、青森県の津軽平野東南部に位置し、平賀町、尾上町を管轄する事務組合である。
西に津軽富士と言われる霊峰岩木山を仰ぎ、北東には八甲田連峰の櫛ケ峰をはじめとする山々が連なり、山麓は広大な原生林を形成し、その一部は十和田八幡平国立公園となっている。
当地域は、県下一の作付面積を誇る「つがるロマン」などの良質米、中央市場において特選銘柄としての地位を確立している「青森リンゴ」、更にニンジン、レタスなどの高冷地野菜等、青森県を代表する特産物の産地である。
平賀町は景勝地が多く、自然あふれる温泉の町である。また、県内有数の「遺跡の町」としても知られており、一八五か所もの史跡や遺跡を目にすることが出来る。更に、年間を通して数多くのイベントが開催され、その中でも、毎年大晦日に行われている「冬のねぷた祭」は特に注目されている。
一方、尾上町は、米とりんごと植木の町として発展、坂上田村麻呂将軍が田道命を祭ったとされる猿賀神社や、大石武学流の庭園と明治時代の和洋折衷建築の「盛美館」のある、国指定の名勝「盛美園」があり、信仰と観光の町としても知られている。また、平成四年には、県内初の「生け垣条例」を定め、緑と花の美しい町を実現させるために、町の顔づくりの一環として生け垣づくりを推進している。
当本部は、昭和四四年四月に一消防本部、一消防署、一分署の三六人体制で消防業務を開始したが、平成二年二月、平賀町と尾上町の中間点に新庁舎が落成し、一消防本部、一消防署となって、現在に至っている。職員は六五人の三交替で、面積二四〇・四八km2、世帯数八、四〇〇戸、人口約三三、〇〇〇人の生命と財産を守るため、地域における防火、防災に積極的に取り組み、町民の期待に応えられるよう努力を続けている。
一 家庭防火診断
地域に密着した火災予防活動を目指して、管内の六〇〇余の老人世帯を対象に、毎年各世帯の防火診断を行っている。この防火診断