そのたび、消防の持てるすべての力と各関係機関と力を合わせ被害の軽減に対処してきたところである。
今回、紹介する救急救助事例は、河川の災害復旧工事中に地盤の軟弱から護岸が崩れ、工事作業に従事していた作業員二人が生き埋めになった事故事例である。
一 事故の日時等
(一) 発生日時
平成六年一二月八日(木) 一五時二八分頃
(二) 発生場所
山梨県南都留郡西桂町小沼七八二番地欄干川(らんかんがわ)(一級河川)
(三) 覚知時間
一五時三〇分(一一九番通報)
(四) 覚知内容
工事責任者による一一九番通報「西桂中学校裏側の河川修復工事現場で片側護岸が崩れ作業員二人が下敷きになっている。」との通報内容。
(五) 現場到着時間
一五時三八分
(六) 救助活動完了時間
一七時三〇分
(七) 要救助者(二人)
男性A 五七才(病院収容後、死亡) 内臓破裂による出血ショック
男性B 五九才 窒息による死亡
(八) 出場車両・人員等
指揮隊(指令車) 一台 三人
救助隊(救助工作車) 一台 三人
救急隊(救急車) 二台 六人
応援隊(ポンプ車等) 三台 九人
二 事故の概要
欄干川(一級河川)の災害復旧工事中、一部左岸地盤が緩み護岸及び護岸上部より更に約三m積み上げられた石垣の崩落事故である。
崩落の範囲については護岸上部の石垣及び左岸の護岸(コンクリートブロック、高さ二・五m、厚さ約五〇cm)で長さ二〇mに及ぶ。
この崩落で河川(川底の幅四m)の中で作業していた二人が逃げ遅れ、崩落した石垣及び護岸の下敷きになったもので一人は行方不明。もう一人は崩落し倒れ掛かった左岸の護岸と右岸の護岸に挟まれ、ほぼ川底(約四m)中央の位置に側臥位で挟まれている状況であった。
三 活動状況
先着した救急隊及び救助隊は、工事関係者に誘導され現場到着。川底で崩壊した護岸に全身が挟まれている要救助者一人(男性A)を確認するも呼びかけにはまったく反応がない状態であった。
もう一人(男性B)は、約五m上流で作業していたと言う関係者からの情報を聴取するも崩落したコンクリートなどが集積しており要救助者の位置を確認することができなかった。
現場指揮者は救助活動が長時間を要すると判断、本部指令室に応援要請をした。
工事関係者の供述をもとに行方不明者の検索と共に川底で崩壊した石積及び護岸に挟まれている要救助者の救出に当たった。
要救助者は、川底で右側の護岸に崩落した護岸が地滑り的に寄りかかり、その間隔は、約三〇cm程しかなかった。
寄りかかっている護岸は不安定なため二次災害の恐れもあることから、各隊員は慎重に大型のエアーマットを要救助者の頭部及び足部付近に挿入、またそれと共に角材等活用し間隙を広め、崩れた護岸の安定を図りながら救助活動を行なった。