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できず、また、急傾斜なため梯子車の架梯を断念した。梯子車の作業と同時に、到着時の情報から「逃げ遅れ一名」を受けていたので、救助隊員が援護注水を受け五階五五号室玄関から進入を試みたが激しい火炎により進入を阻まれた。一方、地上においてはポンプ車からの中継体制が整った時点でタンク車の放水銃から放水し火勢の鎮圧を図った。防ぎょ活動の他避難している住民に対し、他の逃げ遅れの確認、怪我人の有無等を聴取し、自治会長に被災した住民を自治会館に収容するように指示した。また、後着の各署所の消防隊に水損防止を主眼とした活動を指示、懸命な防ぎょ活動の結果、午後一〇時四七分に鎮火、鎮火直後、再度の屋内検索により室内から女性の遺体を発見した。

 

四 おわりに

本火災においては、五階建ての共同住宅の最上階からの出火であったため、当初水損を考慮し筒先配備を最小限に抑えたものの、火勢及び人命検索の必要性から放水銃による火勢の抑制に切替えた。しかし、他隊及び消防団の早急な水損防止活動により、居住区画三〇世帯のうち、出火室を含め全損世帯は八世帯だった。また当市において実施している自治会担当制度が効果を発揮し、普段から自治会長宅等を訪問しているため、事故時において自治会内の責任者を明確にできた。このことは市営団地での火災であったため、市住宅課との連絡に非常に役立った。

しかし、梯子車の活動に阻害となった駐車車両については、普段から自治会内で話し合い違法駐車をしないよう広報している等、住民は問題意識を持っているものの、一部の住民には浸透していない。消防としても、以前から行政指導を行っているもののいぜん共同住宅の周辺の青空駐車が消防活動の阻害となっているのが現状である。これからも、自治会担当制度等を生かし、住民の中に入っていき、火災の悲惨さを認識させ、消防、市民総ぐるみで円滑な消防活動に取り組んでいきたい。

(池田 勝三)

 

救急・救助

河川護岸の崩れによる生き埋め救助事例

富士五湖広域行政事務組合富士五湖消防本部(山梨)

 

はじめに

当消防本部の管内は、山梨県のやや東南に位置し、その管轄の一部は静岡県に接している。日本のシンボルとしての雄大な富士山、その北麓に広がる溶岩樹海、また東から山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖からなる富士五湖等があり、この富士五湖を中心とした国際観光都市として四季折々の風情を持ち、自然の豊かさを楽しませてくれる。

当本部の構成市町村は一市二町六村で、当本部はこれらを管轄とする一部事務組合の消防本部である。人口一〇一、八一一人、総面積四八四・三一km2である。

我が地域の特徴ともいえる夏季の観光シーズンには、おおよそ二〜三倍に人口が増加することから救急出場件数が多く、毎年増加しているのが現状である。

消防体制は、二署、二出張所、一分遣所で組織され、職員数一一七人で各種災害に対処している。

山と湖に囲まれている我が管内は過去、幾度となく自然の恐ろしさを知らされる災害が発生した。

特に、昭和五五年に起きた富士山の落石事故により四〇数名の死傷者を出した事故をはじめ、落雷事故、富士山滑落事故や台風などによる土石流災害、また湖における水難事故、五湖の異常増水による災害など多種多様の災害が発生した。

 

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