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三好郡行政組合消防本部(徳島)

 

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三好郡行政組合消防本部は徳島県の西端部に位置し、北を四国三郎こと吉野川に接し、南は四国山脈に抱かれた豊かな自然環境の中にある静かな町である。四国のほぼ中央にあって、鉄道、道路等には恵まれているものの、一方では、日本三秘境の一つといわれる祖谷(いや)地方も管轄している。面積は約八四四km2、五六、〇〇〇余の人口は減少傾向にある。皮肉にも、秘境祖谷地方は自然を求める観光客が押しよせている。時あたかも紅葉シーズンで渓谷の青、山々の木々の彩りは、見事なまでに大自然のコントラストを演出し、なにものにも変えがたい感動を与えてくれた。かけがえのない自然、後々まで伝えたいものである。ちなみに、高校野球で蔦監督が率いた池田高は、管内の池田町にある。

 

・ 広大な管内に苦慮

消防本部の発足は、昭和四二年の池田町が最初、四七年には六町(三好、井川、三野、三加茂、山城町)の三好消防組合、五〇年に複合の行政組合とし、五五年に二村(西祖谷山、東祖谷山村)が加入した。現在、一本部、三署、一分署体制で、垂水康雄消防長以下八一人が地域の防災を担っている。

本部発足後の災害記録を見ると、昭和五八年九月に台風一〇号により山城町が大きな被害を受け災害救助法が適用された記録があるが、他に大きな災害の記録はなく、比較的平穏が続いている。

消防団は、八団、七〇分団、一、八〇九人で組織されている。消防署及び分署の指導で定期的な訓練と二年に一度は県大会に合わせた特訓も行う。管内には、上水道のない地域等もあり、集落ごとに防火水槽を設けているが、消防署から遠い地域に多く、そこでは地元団員の活躍が心強い存在である。

 

・ 県外本部とも協調

かねて工事中であった徳島自動車道が延伸され、当地にもICが設けられ、本年四月に開通が予定されている。これに先だち、高速道路の大規模事故等の対応について、隣接本部と協議を進め、協調体制を整備している。

当本部では、地域に密着した消防としてサービスに努めてきたが、この度の隣接(県外)本部との協議の中で、「部分的な立ち遅れ」のあることを痛感、これを機会に「改革」を検討中という。限られた予算・人員の中でのこと、組合加入の各町村の協力を得て、慎重に検討されている。今はまだ、詳細を明かせる段階ではないが、組織、機構からの抜本的なものとしたい意向である。

 

・ 本部初の救急救命士誕生

昨年、当本部初の救急救命士が誕生、他に一人が研修を受講中である。今後は毎年二人の研修受講を計画している。高規格救急車はすでに二台購入しているが、運用開始にはいたっていない。受入れ側の医療機関との連携や情報通信網の整備等の問題が残されているためである。中でもネックは、管内全域をカバーできる通信網の整備で、新たに数基の固定アンテナが必要になる。いっそのこと人工衛星を使ったら?と悩みは尽きない。いずれにしても、もう少し時間が必要のようである。

 

・ 「一隅を照らす」

高速自動車道の開通という動脈の貫通に端を発した改革への道。とかく「遅れ」というようなマイナスイメージは口にしたがらないもの、敢えて公言することで、職員の結束を図り、達成への決意を表したものであろう。ただ、スポットライトをあびたスタンドプレーに目を奪われがちな時、大所高所に立って、冷静に全体を見渡す指揮者が必要である。垂水消防長は「一隅を照らす」という言葉を座右の銘としている。正に打って付けの人である。

(海老原 光三)

 

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