救急体制は、四分署に救急車を配置し、さらに救急の高度化・高規格化を図るため平成六年四月、本署に高規格救急車を配置し、現在救急救命士六人が活動している。
平成九年の救急出動件数は一、三七九件であったが、年々増加する救急事故に対処するため救急業務の充実、強化に積極的に取り組んでいる。
ここに紹介する救急事例は、老人福祉施設に入所している老人が一時帰宅中に、縊頸による自損行為を図ったものの、バイスタンダー、救急隊及び医療機関の連携により救命された事例である。
二 事例
(一) 事故概要
平成一〇年五月一七日(日)、七時三七分 一一九番覚知。
八六歳女性が、自宅寝室のカーテンレールに下着を結んで首を吊っているとの通報内容であった。
時間経過を表一に示す。
隊長と隊員は救急救命士、車両は高規格救急車であった。
※1 「口頭指導」 一一九番通報を受けた通信勤務員は、すぐに傷病者を下ろし、呼吸がなかったら人工呼吸をするように口頭指導をしている。
※2 「第一報」 当消防本部では、一一九番受信時CPAもしくは意識がないなど重篤であることが予想される場合、出動途上、基幹病院へ第一報(一一九番受信内容・医師の待機要請)を入れ病院側の受入体制及び特定行為がスムーズに行えるよう「指示連絡体制」を確立している。
(二) 現場到着時の状況及び観察結果
寝室のベット上に仰臥位となり、家族に見守られていた。
観察結果は、
・顔面蒼白 ・意識レベル:JCS三〇〇 ・呼吸:失調性 ・脈拍:総頸動脈で弱く七八回/分 ・血圧:測定不能 ・瞳孔:左右三mmで対光反射は遅鈍 ・動脈血酸素飽和度:九〇% ・心電図:心房細動 ・頸部に索状痕あり
家族から状況を聴取したところ、七時三五分頃発見し、すぐに一一九番通報。同時に傷病者を床に下ろし、ベットに移動したとのことであった。
また、この傷病者は高血圧、糖尿病、心房細動、陳旧性脳梗塞の既往があり、平成八年六月から平成一〇年四月まで老人保健施設に入所。平成一〇年五月からは老人福祉施設に入所していたが、月に一度の割合で外泊(一時帰宅)をしていたとのこと。
今回の事例も一時帰宅した翌朝の出来事であった。
(三) 救急処置
・口腔内吸引 ・酸素一〇l/分を接続しバッグマスクによる人工呼吸 ・頸部固定
(四) 搬送時の状況
搬送途上のバイタルサインの変化を表二に示す。
(五) 病院収容後の経過
病院到着後、気管内挿管し、麻酔科管理でICUに入室。翌日、意識清明となり神経内科に転科。四日後、全身状態改善し、精神科に転科。五日後には退院となった。