二時三九分一一九番覚知により直ちに出動した。
現場到着時の状況は、火点から二〇m近くまで火の粉が飛んできており、火元の倉庫が激しく炎上し、幅員約一・五mの通路をはさんだ東側の建物へすでに延焼中であった。
さらに火元に隣接する西側の建物は、シャッターが閉まっていたが、火煙を確認し、火災は延焼拡大の様相を呈していた。
隣棟建物間が非常に狭く、有効な注水ができないことから、火元から東側、西側とも二棟目の建物の中をホース延長し、防ぎょにあたった。
現場本部は、署職員の非常招集と、丹原町消防団全団の招集を要請し、包囲体制を強化した。
付近の聞き込みをしていた署員から、火元西側建物の年寄の女性が見当たらないとの情報を入手した。その時点で、戦力をその建物へ集中するも火災の様相は屋内進入不可能な状態であったため、鎮圧後、屋内検索を開始したが、検索開始五分後、二階西側の部屋で遺体で発見された。
先着隊到着から一時間三八分猛威を振るった火勢も、消防隊必死の活動により四時一九分鎮火した。
おわりに
本火災は、出火時間が午前二時三〇分頃の深夜でかつ建物密集地という悪条件に加え、放火の疑いということで発見通報が遅れている。
木造建築物が軒を連ねる住宅密集地火災では、包囲防ぎょ戦術が困難であることに加え消火放水とともに隣接家屋への延焼阻止の注水を含めた多面的放水が必要である。
焼死者は、一度は家の外へ出ていたにもかかわらず、(付近の人が確認している)再び家の中に入ったために命をなくしている。
なお同現場を中心として、一五〇m範囲内で同時刻頃不審火が三件連続発生している。
この火災で商店街の人々は、原因者が確定されないまま、約半年間、夜遅くまで警戒活動を実施した。
消防としては、防火講習、消防訓練等啓蒙活動を通じ、不審火に対する対策、又災害弱者を災害から守る等、消防、市民総ぐるみで火災予防に取り組んでいきたい。
(越智 茂)
救急
「縊頸により自損行為を図った高齢者の救命事例」
本荘地区消防事務組合消防本部(秋田)
一 はじめに
当消防本部は秋田県の南西部に位置し、南は霊峰鳥海山を仰ぎ、西は日本海に面した消防事務組合で、本荘市、岩城町、大内町、東由利町、西目町の一市四町で構成され、管内面積六六六・三km2、人口約七四、〇〇〇人、消防体制は一本部・一署・四分署、職員数一一八人で、住民が安全で安心して生活できる地域づくりを推進している。