文化財等に関する火災予防対策について
京都市消防局
日本の文化財は、木造の指定文化財建造物に代表されるように、美術工芸品を含めてその多くのものが、火災により価値を失う危険性を持つという共通の弱点があり、『国民共有の財産である文化財を火災から守ること』が、消防に与えられた重要な責務であることはいうまでもない。
京都市消防局では、自治体消防発足以来、文化財の防火対策を消防行政の重要課題のひとつとして、昭和四八年には全国の消防機関で唯一の「文化財係」を設置するとともに、各消防署にも文化財担当者を配置して文化財に対する防火指導体制の強化を図るなど、文化財を火災等の災害から守るために様々な取り組みを行っているが、その主なものについて紹介する。
【京都市内の指定・登録文化財等】
京都は、西暦七九四年(延歴一三)に唐の長安城を模範に、南北五、二〇〇m、東西四、五〇〇mの平安京が建設された。二年後の七九六年(延暦一五)には、都の南に位置する羅城門の左右(東西)に東寺と西寺とが創立されている。
この平安時代と呼ばれる四百年間、京都は貴族社会の舞台として王朝文化が育まれ、続く鎌倉時代には、公家文化、武家文化、仏教文化が共に影響しあう文化が台頭してくる。さらには室町、安土・桃山、江戸の各時代の歴史を物語る多数の文化資産は、平安京の建都以来千二百年余が経った今も市内の至るところに蓄積されており、世界文化遺産として登録されている『古都京都の文化財』は、古都京都の歴史とこの群を成す文化財が総体として評価されたものである。(表1参照)
京都市には、国の指定文化財が、「国宝」は全国の約二〇%、「重要文化財」は約一五%も所在している。(表2参照)
また、国の指定以外の重要な文化財については、京都府及び京都市が独自に文化財保護条例を制定し、保存と活用のための必要な措置を講じている。さらに、この条例には文化財の登録制度や文化財環境保全地区制度などが導入されており、指定文化財以外の文化財の保護や文化財周辺を含めた環境の保全を目指すなど斬新さを持っている。(表3参照)
【文化財等に対する火災予防対策等】
京都市では、市内にある文化財に対し均一かつ効果的な防火・防災指導を図るため、消防法施行令別表第一(一七)項の対象物(以下「(一七)項対象物」という。)のほか、指定美術工芸品等が所在する防火対象物や文化財保護法又は府、市の文化財保護条例による登録文化財(建造物及び美術工芸品)その他将来に向かって広く文化財として保護をしていく必要があると認められるものを、特定文化財対象物に指定(平成一〇年一二月三一日現在九〇三対象物)して、必要な防火対策を講じている。
◎ 特定文化財対象物の防火対策
近世以前の指定文化財建造物は、六〇%以上が寺社建築であるが、京都市ではさらにその率が高くなる。これら神社や寺院の特徴としては、「敷地が広いこと」や「関係者が少なく、高齢化の傾向にある」ため、「管理が行き届かない」、「火災発見の遅れ、通報、消火、重要物品の搬出困難」、「火災被害が拡大する」などのおそれがあることから次のような指導及び取り組みを行っている。