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紀勢地区広域消防組合消防本部(三重)

 

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当本部は、三重県の南部に位置し、奈良県との境に接し、大台町、宮川村、大宮町、紀勢町、大内山村及び南島町の四町二村で構成され、平成八年一二月より業務を開始した新しい消防本部である。管轄面積は七二九・四四km2で県下一の広さを有し、人口三三、二〇〇人、一本部、一署、二分署、一出張所、職員七四人と消防団六団、団員一、三四五人が郷土の安全を守っている。

松阪から和歌山県に通ずる国道四二号線に沿って宮川、大内山川が伊勢湾に水を注ぎ、管内の九割を占める山岳地帯は近畿の大屋根大台山系の山々に囲まれ、山紫水明の地として山の幸を、そして紀勢町、南島町には広大な熊野灘が広がり、伊勢志摩国立公園の南玄関に位置し、沿岸漁業が盛んでその漁獲量は県下一を誇り、海の幸を育む自然豊かな町村である。

・ 先見の明・合理的な施設!

コンピューターと多重無線方式を取り入れた消防通信指令総合システムの導入は県下初で、管内の一一九番通報を集中管理し、防災中枢施設として将来も展望している。また、庁舎は防災訓練・講習等に合理的に対応でき、訓練・出場等の利便性、ホース・資機材の収納スペース、敷地内における放水訓練等、随所にすばらしいアイデアが盛り込まれ、そして消防隊用訓練塔は、そのまま救助大会に使用できるほど充実したものである。(写真)これらにより迅速・的確な消防活動に万全を期し、絶大な効果を得ている。

 

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・ 救命率の向上をめざして!

山間地を有する地域的特性から、救急車が到着するまでの所要時間が平均で約一〇分、搬送先は約五〇%が管外の松阪・伊勢地区の病院となり、三〇分を要することも多い。この現状を鑑み、救命率向上を目標に救命士の養成及び一〇年計画で全職員の救急II課程修了を目指している。また、本年度には高規格救急車の導入も予定されている。

・ 消防団との協力体制!

財政の困窮、過疎化問題、その上に広大な管轄区域の安全を守るためには、消防団との協力体制の確立なくしては成り立たない。消防団長、副団長との連絡会や合同訓練、団操法の指導等を積極的に行い、火災時には消防職員・団員とが一致団結した活動ができるよう努力している。

・ 「人」を育て「職」を研く!

業務を開始して二年、職員の平均年齢が二九歳と若く、消防経験の不足から当初は失敗の連続であった。しかし、人材の育成を最も重要視し、また急務と考え、消防長を中心として、消防経験者の積極的な指導により、災害に迅速的確に対応する精強な消防隊員を育てるとともに、総務・予防関係の事務処理能力の向上を図っている。

・ 「消防」と「住民」の一体化!

藤原消防長は「住民の理解を得てこそ、消防行政を円滑に推進できる」と力説された。そこには、長く常備消防がなかったため、消防に対する住民の理解がまだまだ十分ではないという原因がある。そこで広報活動を積極的に行い、住民指導等を通じて広く接点を持つよう努力している。そして「出勤時の服装一つにも気を付け、消防職員として公私を分かたず自覚することが重要であるしと述べられ、自身の経験を新しい職員たちに熱意を込めて伝えている姿勢がとても印象的で、「鉄は熱いうちに打て」の言葉の如く、職員の心に消防長の信念が刻まれている姿を見た思いである。

(中村 昌美)

 

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