三 おわりに
この火災を契機に、各町内会において自警団の結成や可燃物品の除去整理、夜間照明の設置といった住民の警火心に一層の高まりが見られた。我々はこの教訓を生かし、市民に対し一層の安全対策を呼びかけるとともに、放火されない環境作りに全力を傾注しており、また非番員召集の方法や遠隔地域の消防車両を適宜移動待機させるなど、臨戦体制の強化を図っている。
(新保 義彦)
救急・救助
正面衝突!軽ワゴン車大破!
出水地区消防組合消防本部(鹿児島)
はじめに
出水地区消防組合は、鹿児島県の北西端に位置し、熊本県と境を接し、出水市・高尾野町・野田町の一市二町で構成され、昭和四九年に発足した。管内面積三三〇・三七km2、人口五八、九五七人である。
管内は、北薩の秀峰紫尾山(しびさん)に抱かれ、不知火海をはさんで長島、天草を目前に、冬には遠くシベリアから一万羽の鶴が訪れる豊かな出水平野に広がる田園都市である。
当本部の消防体制は、一本部一署一分署、職員六六人で消防の任に当たっている。
ここで紹介する事例は、九州を縦断する主幹線国道三号線上において、普通トラックと軽ワゴン車が正面衝突し、ワゴン車がトラック右側とガードレールに挟まれた事故で、救出までに時間を要し、現場に医師を要請した救急救助事例である。
一 事故の概要
(一) 発生日時
平成九年一〇月二六日(日)一七時〇○分頃
(二) 発生場所
鹿児島県出水市前田地内 国道三号線
(三) 覚知時刻
一七時〇一分
(四) 覚知内容
加入電話で所轄警察署から
「出水市前田、国道三号線上において車の衝突事故で、中に人が閉じ込められている模様。なお、負傷者数については不明。」
(五) 現場到着
一七時〇九分
(六) 救助活動完了
一七時三六分
(七) 要救助者
・ 男性 五〇歳 全身打撲〜重症
・ 男性 四四歳 全身打撲〜中等症
・ 男性 四四歳 全身打撲〜死亡
・ 男性 四九歳 全身打撲〜重症
(八) 出場車両・人員
救急隊(救急一・二号車) 二台五人
救助隊(救助工作車) 一台三人
支援隊(タンク車) 一台二人

南日本新聞社提供
二 現場到着時の状況
一七時〇九分先着した救急隊は、ただちに状況を確認した。普通トラック右前部に軽ワゴン車の前方が食い込み、軽ワゴン車が普通トラックとガードレールの間で原形もなく押し潰されており、事故車両が下り車線をふさぐ状態で停車していた。軽ワゴン車の中に男性四人が閉じ込められているのを確認した。
運転席の男性は、顔面からの出血が見られ呼びかけに反応がなく、総頸動脈も触知できず大破した車内で下半身を挟まれていた。後部席右側の男性は、頭部からの出血が見られ上半身は後部ドアから出ており、両下腿部を運転席と後部席の間に挟まれ、呼びかけに反応がなく、いびき様の呼吸が認められた。助
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