■ リーダーは業績志向と人間志向とに強い関心を持て
リーダーシップを発揮していくためには、
1] 担当するセクションの業績をいかに効果的に追求していくかという目標達成への強い意識を持ち行動する、
2] 協力・協働する部下とどう係わっていくかという集団維持に対する強い関心を持ち、その実行をする、
という二つの側面を持ちかつ完全な履行が求められるのである。言い換えるなら、業績志向と人間志向に対して高い関心を持ち、それに向かって行動しつづけることである。組織全体の目標と個人の欲求とを一致させるのである。
プランニングの段階では、関係者を集めて全方位から検討し、納得ずくで個々に計画を分割する。計画に向けた実践段階では、ポイントを抑え日程改訂など必要があれば援助を惜しまず、計画終了後には全体会議を開き、学び取ったもの、参考とすべきものを抽出して、今後のプランニングにつなげる。リーダーと部下の間には、相互信頼・支援・尊敬を基礎としてチームワーク化を推進する。コミュニケーションは率直さと相互通行でオープンになっている。
業績に対する関心は極めて高いのだが、人間に対する関心は低いという傾向を持つ権力型・厳父型のリーダーや、逆に、業績に対する関心は低く、人間に対する関心は強いタイプのリーダーでは、効果的なリーダーシップの発揮など有り得ないこととなる。
言い換えれば、仕事のノルマが厳しい職場や仕事の遂行に厳しいリーダーによるリーダーシップでは、職場の維持よりも目標の達成の方に重点が片寄り、部下という人間にいきがい・ヤル気を減退させてしまう。またひいては怪我・ストレスの増進による人間性喪失に至る危険が増すことになる。
逆に、仕事が厳しくない職場や優しいリーダーの下にある職場では、みな仲良くすることに重点が置かれ、雑談に花を咲かせたり私用を果たすことに忙しく、仕事の遂行が後回しになる危険が生じる。
いずれに片寄ることなく、バランス良くしかもより高いレベルで双方を達成していくことによって、組織の求めるリーダーシップは完遂されるものとなっていくのである。
さらに加えるならば、所与された目標を達成するには、部門の長であるリーダーは、自分(職場)の置かれている状況=現実を直視して、具体的戦術にブレーク・ダウンしたものすなわちプランニングを策定しなければならない。そして個々人の部下の特性(能力・経験など)を活かしつつ、シナジー効果(総和以上の力)を出さなければならない。
だからこそリーダーは、現状がどうなっているのか、全体と自分(自部門)の関係はどうなのか、目標達成に対して職場内外にある障害となる要因は何なのか(問題は何か)、障害要因を除去するにはどうすればよいのか、などに関して徹底的な情報収集とその活用を行わなければならないのである。
つまり言いたいことは、リーダーがリーダーシップを発揮していくためには、目標を達成するための問題発見とその解決を図らなければならないということである。
■ 部下たちを目標達成に向かわせる「表現力」を駆使せよ
リーダー一人が目標達成に頑張っても部下たちがその達成に意欲的でないなら、職場として問題である。リーダーシップとは、いかに部下たちを目標達成方向に巻き込んでいく(動機づけ、ヤル気にさせ、協働体勢を整える)が、そしてそれを可能ならしめるコミュニケーションとくに「表現力」をいかに駆使していくか、である。
部下といってもそれぞれが個性を持った人間である。みな考え方・見方・価値観・意見など異なったものを持っている。リーダーの言う一言一句に、みな自らの解釈を交えて脳にインプットする。その際、年齢や経験・性格や立場も違う部下に、何ら過不足・誤謬・湾曲・欠落なく、等しく内容が質・量とも全員に一〇〇%伝達されることなど考えにくい。必ず個人差が生じるものである。伝えることの多いリーダーには、それだけに、つぎの事柄には留意してもらいたいのである。
1] 伝える内容がアヤフヤでは聞き手は理解しにくい、伝える内容を論理的にまとめ、5W1Hなどに整理して伝える(伝達内容の整理)
2] 難解な漢語や横文字を使用したり、沢山の数字を口頭で一度に伝えたりしても、誤って理解されるので、メモに書いて渡すなど、部下が理解しやすい媒体を使用する(伝達媒体の選択)
3] 仕事が忙しい時に、それほど緊急でもない内容を伝えようとしても、相手は聞いてくれない可能性がある、相手の状況をみて、適切にタイミングを図って伝えること(タイミングの選択)
4] 一方的に伝えても相手に理解されているかどうか分からない。部下には伝えた後に復唱させたり、質問させたりして理解度を確認する(理解度の確認)
5] 口頭・文書などによる伝達の長短を心得て使い分ける(手段の活用)
ところで、専制的リーダーシップを取る場合でも、誰彼関係なく、ただ指示・命令をワンパターンで行っていいのか、と言うと、ここでも相手(部下)の状況に添ってその指示・命令の仕方を変えて行う必要がある。つまり状況に対応した指示・命令をすることだ。1]いいつける(命令)2]たのむ(依頼)3]はかる(相談)4]ほのめかす(暗示)5]つのる(募集)という五つのパターンを、部下の経験・能力などの違いに応じて使い分けることである。
リーダーは部下たちにより具体化・細分化した目標を与え、また、指示・命令を下しつつ、所与の部門目標を達成していくのだが、指示・命令の後、いかに報告・連絡・相談を部下から取り付けるかが重要になる。なぜなら、リーダーはこれら報・連・相によって、部下たちの目標達成に向かっての進捗状態を把握できるのだから。そして新たな指示・命令の是非を判断し得るのだから。
リーダーは、日頃から部下に向かって、的確・迅速にして正しい報告・連絡の仕方と相談の仕方をキチッと指導しておかなくてはならない。この点を疎かにしておくと、ケガやミスの発生あるいはムリ・ムダ・ムラが随所に発生し、目標の達成など有り得なくなってしまうのである。
■ 部下たちをヤル気にさせる「傾聴力」に傾注せよ
目標達成に向け、リーダーからの単なる適切な指示・命令と部下たちからの原理・原則に叶った報・連・相の繰り返しだけでは、職場の活性化・ヤル気に満ちた、燃えるような職場集団にはならない。限界があるのだ。