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事故現場は、掘削した土砂と前日からの降雨により地盤が軟弱になっており、要救助者は、背部からアームが直撃し、腹臥位で基礎溝の側壁中に顔面及び胸部を土砂の中に埋没した状態でアームの下敷きになっていた。

出場車両は、既存の建物が障害となり増築工事現場まで近付けない状態であった。

アームの下敷きとなっている要救助者の救出に時間を要すると判断し、自力で脱出した負傷者を医療機関へ搬送するため、救急隊の応援出場を要請した。自力脱出した負傷者の状態は腰部の疼痛を主訴とし、圧痛はあるものの変形、出血、胸郭の運動異常等はなく、バイタルを観察後、応援の救急隊に引き継いだ。

現場に救助工作車が近付けず、転落した重機による二次災害の危険性を考慮しながら、マット型空気ジャッキを使用してアームを持ち上げようとしたが軟弱な地盤でジャッキだけでは救出できず、要救助者の身体の下の土砂をスコップで掘り下げて救出した。

救助活動中、救急隊員が顔面周囲の土砂を手作業で除去して観察を実施したところ、意識レベルJCS三〇〇、呼吸はなく、脈拍不触知で、一刻を争う状態であった。救出後、救急隊は顔面清拭をして、鼻・口腔内吸引処置を実施し、頸椎、脊椎損傷を考慮してスクープストッレチャーで全身保護した後、メインストッレチャーで車内収容、心肺蘇生法を実施しながら三次医療機関へ搬送した。

 

五 おわりに

今回の事例は、軟弱な地盤の建設現場で救助工作車が進入不能となる悪条件の中、重機の下敷きになっている要救助者の救助活動であり、現場到着から救出まで若干の時間を要した。要救助者を目の前にしながら大型救助資機材が使用できない焦り、限られた資機材と狭あいな作業スペースの中で、二次災害を考慮した救出方針の決定と判断が要求された。

今後、ますます複雑多様化するであろう救急・救助災害に対応するためにも、今回の事例を教訓とし、早期の情報収集、状況判断はもとより大型の救助資機材に固執することなく、基本的な救助技術の習得と連携体制の確立にも努め、組織的救出方法が必要とされる。最後に、尊い生命を亡くされた方の御冥福を、心よりお祈りいたします。

(田村 和彦)

 

予防・広報

安心して住める、住民のための環境造りを日指して!

竹田広域消防本部(大分)

 

春高楼の花の宴─瀧廉太郎生誕の地、豊後竹田駅に列車が到着する度に、このメロディが流れる街、城下町竹田に、当消防本部があります。九州のほぼ中央、大分県の西南部に位置している。

地勢は、祖母山、傾山系の峻険な森林地帯とその山麓部、久住大船山群高原平野部並びに阿蘇外輪山に囲まれた高原地帯と中央平坦部に大別される。

河川は南部に大野川、北部に大分川が流れその上流が三〇数本の中小河川であり、昭和五七年、平成二年、五年と未曾有の大水害が発生している。

交通は、東西を貫通するJR九州豊肥本線と国道五七号線及び南北に走る国道四四二号を軸として、県市町道・農免農道等の地方道そが渓谷〜高原地帯と走っており、近年改良が進み市町間の距離が大幅に短縮されている。

管轄区域は、本部の所在する竹田市と隣接する五町をもって一部事務組合として、面積六九三・九一km2、人口四一、七四三人である。一本部、一署、二分署、一分駐所、職員七五人で、地域の安全のため日夜消防業務に励んでいる。

 

一 広報媒体の活用

当消防本部では、各市町の防災無線及び、オフトーク通信を活用し、春、秋の全国火災予防運動週間中若しくは管内で火災が多発した場合、乾燥注意報が発令中の場合等、防火広報を実施している。

 

 

 

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