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四 本火災の特異事項等について

(一) 前述のとおり、現着時建物全体に延焼拡大しており、また、開口部が正面一か所しかない等、有効注水ができなかった。更に、倉庫内にはビートパルプペレット(ビートの粕を圧縮乾燥した飼料)二〇kg詰・五五、〇〇○袋・一、一〇〇tが木枠のパレットの上に三段から四段、高さ約六mに積まれ収容されていた。筒先口数一八口で放水したが、ビートパルプペレットの内部及び下部まで水が浸透せず、建物正面側より次々と背面へ延焼拡大したものであった。また、隣接建物(同規模で同じ内容物)との間隔が狭く、延焼を阻止するのに筒先からの放水では中心部まで届かず、シュノーケル車及びブレークスクアート車で高所より放水するも、屋根のトタン等で有効注水とならなかった。このため重機により建物を破壊拡散し、収容されているビートパルプペレットを除去しながら消火作業を行ったものである。

当日は、最低気温が氷点下一五度という厳寒の中、深夜から翌日の朝八時五〇分に交替するまで不眠不休の活動を行い、困難を極めた火災であった。

(二) 出火原因については、放火、漏電及び収容物ビートパルプペレットからの自然発火の三点が考えられた。

放火及び漏電については、消火作業の重機により建物が破壊されており、物的証拠がない状況から特定するにいたらなかった。

自然発火については、ビートパルプペレットが水分を含み砕けた状態で長時間積まれていれば、酸化熱が蓄積され自然発火の可能性はある。しかし、ペレットの状態で火源があれば、着火はするが自然発火は考えにくく、また、隣接の六号倉庫にも同時期にビートパルプペレットを貯蔵しているが、そのまま原形を保っている状態であり、自然発火の可能性は低いと考えられる。以上のことから、本火災の出火原因については不明としている。

(三) 寒さ対策として、災害支援車(当消防本部の大型バス)を使用し、また、非常食(パン)を調達、隊員の安全・健康管理に努めた。また、消防車両等へ燃料の現地補給が不可欠であった。

 

おわりに

本火災の教訓から防火管理の徹底と火災発生時の消火活動を容易にするための、倉庫内に保管されている物品等の情報収集とそれに対する消火方法の確立及び厳寒期の長時間にわたる活動時の隊員の安全管理対策に全力を傾注していく所存である。

(伊藤 和博)

 

救急・救助

重機が転落、二人死傷

防府市消防本部(山口)

 

はじめに

防府市は山口県のほぼ中央南に位置し、佐波川の下流に開けた県下最大の平野を持つ瀬戸内海の美しい海岸に面した地方都市である。当市はその昔、周防の国府が置かれ、周防国分寺が建立され、名実ともに地方の政治・経済・文化の中心として繁栄してきた。

市内には日本三天神の一つ防府天満宮、東大寺別院である阿弥陀寺、旧長州藩主の邸宅であった毛利邸がある。毛利邸に併設されている毛利博物館では、NHKの大河ドラマ『毛利元就』で脚光を浴びた毛利氏に関する美術工芸品や国宝の展示が行われている。

 

 

 

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