との証明は多数の立木の根が礫を取り巻いており、周辺にはマトリクスとしての土壌があり、今回運ばれてきたものでは無いことが判る。また、以上のことから、この渓谷には、かつての土石流堆積物が厚く渓床堆積物として残されていることに注目する必要がある。今後も土石流が発生することは確実である。
土石流の発生危険渓流を探る
地すべりがその活動によって、特徴のある地形を造ることは前述のとおりであるが、土石流もまた、繰り返し活動する結果、固有の地形を残すことが知られている。したがって土石流が造りだす微地形を判読すれば、土石流災害の危険度を地図上に示すことが可能である。土石流が造りだす地形の一つは、土石流堆積物の分布によるもので、土石流を発生させた渓流の出口付近に残された「沖積錐」という微地形の分布である。沖積錐は扇状地よりも、遙かに小さく、崖錐とは、大きさについても、堆積物の分存する場所からも異なっている(図-一一)。
▲土石流被害の例(山梨県足和田村)(岡 重文、1972)
沢の出口は沖積錐の形、沢の中・上流部の渓床には幅がある。土砂が厚く堆積している事を意味している。この様な場所に土石流が発生すると、被害を大きくする。
土石流には渓床の勾配が関係してくる。渓床勾配が大きければ搬送力を増すことになる。
土石流の危険度判定方法として、建設省河川局砂防部砂防課の「土石流危険渓流および土石流危険区域調査要領(案)」がある。その概要は次のようにまとめられる。
・ 対象渓流は、保全対象が人家一戸以上または公共施設のある一次谷より下流の谷で、勾配一〇度以上の渓流。
・ 土石流の発生危険度は、地形地質調査による危険度分類と渓床堆積土砂量による危険度分類を総合的に加味して評価する
・ 土石流危険区域は、地形、過去の土石流堆積物の分布範囲、氾濫実績をもとに設定する。
右の記述内容は、考え方において、筆者のこの報告(従前のものも含めて)と矛盾する点はないが、用語の一部に多少の違いを感じる部分(例えば、本報告では筆者は渓床堆積物としているが、建設省調査要領(案)では渓床堆積土砂量とあることなど)があるが、特に揃えるようなことはしていない。なお、建設省では、平成一〇年七月一〇日付け、「総合的土石流対策の推進について」の一部改正について(通知)文書があるが、右記の調査要領は従前は人家五戸以上とあったもので、通知の内容に従い、変更してある。
また、ここでは細部の紹介は行い得ないが、この改正では、次のような改正部分がある。「従来の土石