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階に至ることなく、何らかの要因で、水を吸うようなことがあると、軟化して地すべり粘土へと変化するのである。第三紀層地すべりは、長野県、新潟県、山形県などのフォッサマグナと呼ばれる地域や石川県、長崎県その他の地域にも広く分布する(図-二)。

 

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図-2主な地すべりの分布を示す図 地域防災データ総覧「風水害・火災編」、(1985)

 

「破砕帯地すべり」とは、地質構造の上から「破砕帯」と呼ばれる固有な部分に発生する。「破砕帯」とは、地殻を構成する岩石や地層などが、造山運動などの影響を受け、ある範囲に亘って断裂、圧砕などと言われる、不規則な割れ目の集合がある方向に走り、ほぼ一定の幅をもつ帯状の部分を形成するようになった部分をいう。このような破砕作用を受ける過程で、岩体の一部分が粘土化作用を生じたもので、この粘土と化した部分が地すべり粘土となって大地の移動を起こすもので「第三紀層地すべり」よりも若干過激な動きとなるものがある。四国を中心とする中央構造線沿いに多く分布する(図-二)。

「火山性地すべり」は火山活動に起因する噴気孔などから噴出する火山ガスや熱水の影響を受け、周辺の岩石が化学的風化を受けて変質し、地すべりを引き起こす粘土を生成させるもので「温泉地すべり」などと称される。昭和二八年の箱根早雲山の大規模な地すべり、最近では平成九年の秋田焼山山麓の澄川温泉地区の地すべりがある。

 

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図-3 地すべり地形と地すべり各部の名称 谷口敏夫(1963)による

 

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図-4 高知県土佐山田町繁藤での崩壊状況(47年7月豪雨災害:1972年7月5目発生)1972年8月16日撮影(昭和47年7月豪雨非常災害対策本部技術調査団)

 

日本における「地すべり」の分布状況を図-二に掲げる。この図から「地すべり」は、地域に固有な分布をもつものとみることができる。

また、「地すべり」は地形の上でも特徴的な形態を示すもので、「地すべり地形」と称される。図-三に地すべり地形と地すべり各部の名称を掲げる。

 

 

 

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