さらに、災害が大きくなればなるほど重要な情報が入ってこないことを考えれば、大地震が発生した場合、その震源や地震の規模、震源の深さなどをもとに死傷者数や建物の倒壊率、火災の発生数などをコンピューターによって直ちに予測してしまう「被災予測システム」を各都市で備えておく他はない。
「被災者たちが求めている情報」
今回の震災で、NHKは、火災や建物の倒壊など広がる一方の災害を伝えながら、その一方で、被災者たちの混乱を防ぎ、被災後の生活を支えるための情報の提供を求められることとなった。つまり、従来からの災害情報の中心であった「被害情報」に加え、被災者がどのような状況に置かれていて、今、どのような支援策などが必要かといういわば「安心情報」を伝える使命を負っていた。このため、NHKでは、総合テレビと衛星第二(難視聴地域のカバー)、ラジオ第一放送を基幹の放送波として、地震に関する被害情報を始め、死者の名簿、生活に関わる情報を全中放送で伝え、教育テレビとFMラジオで安否に関わる情報の放送を全中と近畿ブロックの管中放送で伝えた。
このうち「生活情報」は、被災者にとって生き残るために緊急に必要とする情報、つまり、「ライフライン情報」であり、NHKにとってもこれまでにないきめの細かい取り組みを求められるものとなった。今回は、鉄道の運転状況や道路の不通か所など交通関係の情報を始め、電気やガス、水道といった市民生活を支えるライフラインの被災状況や復旧の見通しなど日常的に一般のニュースでも扱う情報のほかに、開業している医療機関や営業中のスーパーマーケットやガソリンスタンドの名前、風呂屋に関する情報など日常的には全く扱わない情報まで流し続けた点に大きな特徴がある。地震発生直後から数日間は地方自治体などの情報収集や伝達体制が殆ど途絶してしまった中で、こうした生活情報が阪神地域の人たちにとって大きな支えとなったに違いない。しかし、こうしたライフラインに関する情報は刻一刻と変化するものである。情報収集から放送までの時間差について行けないこともあり、今後、こうした生活情報をどう処理して行くのか、システムを早急に整理しておく必要に迫られている。