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火災現場は、最寄りの消防機関である東消防署から直線距離で東方二・六kmに位置していた。出場した東消防署中隊長は、現場の西約一kmにおいて火災と思われる火煙を確認した。

 

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(二) 先着隊現場到着時の状況

五時三〇分に現場到着した東消防署隊

(ポンプ車、タンク車、指揮車)は、ポンプ車隊が工場正門前の公設消火栓に水利部署し、タンク車隊は、工場敷地内に進入し直近部署した。

出火建物は、火災の最盛期で、建物全体から火炎が噴出していた。東側は、木造二階建の作業場及び倉庫に延焼しており、西側においても、隣接する木造平屋建倉庫の軒下から黒煙が噴出し南に向かって延焼中であった。夜間の警備員に事情を聞くと、「工場内には私一人で、逃げ遅れ等要救助者はいません。火災建物は作業場及び倉庫ですが、収容物についてはわからない。」との情報を得た。

中隊長は、先着隊の消火活動及び付近の状況を見分した結果、南側に隣接する住宅への延焼危険があると判断し、現場到着から五分後、本部指令課へ二次出場を要請した。

(三) 消防活動状況

最先着の東消防署タンク車隊は、出火建物南側の公設消火栓に水利部署したポンプ車隊から中継送水を受け二線放水を実施した。後者隊は、現場到着時すでに出火建物西側に位置する木造二階建の作業場兼倉庫に延焼拡大中であることから、工場西側道路上に順次部署し南側に隣接する住宅への延焼防止に主眼を置いた活動をした。

二次出場隊は、一隊を工場内北端にある防火水槽に水利部署させ、北側の消火活動を、他の一隊を南側住宅地に部署させ住民に避難の指示を与えると共に警戒筒先を配備し、包囲体形を完了した。延焼建物内には殺虫スプレー缶が収容されており、そのスプレー缶が火災の熱を受けて破裂し付近一帯に飛散していた。消防隊は、延焼建物に接近できず有効な放水ができないため消火活動は困難を極めた。

現場東側から三線、南側から三線、北側から二線、西側から五線の計一三線の放水により、覚知から約一時間半後の七時四分、火勢の制圧に成功し鎮圧状態となった。

なお、表面燃焼は鎮圧したものの、蚊取線香の原料、燻煙剤等収容物は浸水性がなく表面は消えるものの内部燃焼が継続していた。そのため、掘り返し作業を併用した残火処理活動を行い、覚知から六時間を超える火災は一一時五一分ようやく鎮火した。

 

四 延焼拡大要因

(一) 火災発生が早朝であり、工場内に警備員一人が在勤していたが、初期消火活動は実施されていない。

(二) 古い木造建築物からの出火であり、建物内には可燃性の収容物が多く、急速に延焼拡大した。

(三) 収容物の殺虫スプレー缶が破裂、飛散危険等活動障害のため延焼建物に接近できず有効な放水効果が得られなかったこと等が挙げられる。

 

 

 

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