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中国返還と香港の消防

香港消防局と中国の消防との交流は、一九八三年に北京消防局の幹部が香港消防局に対し友好訪問を行なった時に始まる。香港消防局はこの友好訪問のお返しとして、一九八六年に北京で開催されたチャイナファイア'86の会議に二名の代表を出席させ、それ以来相互の訪問が行われるようになった。最初の数年は、毎年二、三人の中国の消防幹部が香港を訪問していたが、一九九三年には急に一一名の幹部が訪問した。

一九九三年八月に中国シェンツェン市の工場・倉庫地区で大規模な爆発火災が発生し、同市長からの応援要講を受けて、翌日早朝香港消防隊は出動するための緊急出動体制を整えたが、出動直前になって延焼防止となり応援は必要がなくなったという通知を受けて出動は中止となった。しかし、この災害を契機として両者の間に特に大災害における相互応援の重要性に関する認識が急速に高まった。

その結果、香港消防局とシェンツェン消防局は、一九九五年一〇月一八日にシェンツェン市で、消防技術を交換し、国境間の緊急調整連携体制を強化し、消防活動における協力関係をテストすることを目的として合同演習を行ない、大成功を収めた。

同年一一月には中国公安消防部(部は日本の省に相当する)のスン・ルン少将を団長とする中国の代表団が香港で開催されたファイアイースト'95の出席を兼ねて香港消防局を訪問した。そして、同月末には中国の各消防局から一〇名の中級消防幹部が香港消防局の活動状況を学ぶために四週間の研修を行なった。翌一九九六年の一一月にも、同じような研修が行われ、これが双方の緊密な協力関係を促進する証となって、以後同様な研修が定期的に行われている。

中国の消防幹部は、研修中に香港の防火技術と「火災危険排除通告」の手交制度を含む予防関係法令の施行に特に強い関心を持った。さらに、中国の急速な発展に対処するための近代的消防装備にも注目していた。

一九九五年一二月にはピーター・チェン香港消防局長と同消防局の幹部は、中国を訪問して公安消防部、中国北部の四大都市消防局及び天津と上海にある消防研究所を訪問して、中国の豊富な経験による高度の消防研究状況を視察し、香港消防局にとって大変参考になった。

香港消防局と中国の消防局の大きな相違といえば、香港消防局の隊員は、全て公務員であるが中国の消防局は公安部の下にあって、隊員は徴兵された軍人であるということである。中国への返還以来、香港消防局の全般的活動は何も変わっていない。香港消防局は、今後も大陸の各消防局との交流を一層深めていく予定である。

(ファイアインターナショナル一九九七年一〇・一一月号)

(文責・大野 春雄)

 

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