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勢多中央広域消防本部(群馬)

 

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勢多中央広域消防本部は、県庁所在都市の前橋市を含む一市一町三村で構成される前橋広域市町村圏振興整備組合の消防本部として、昭和五〇年四月に発足した。組合の中心である前橋市は組合が共同で処理する消防事務に関して加入していない、全国的にも珍しい複合的一部事務組合の広域消防で、一町三村で運営される群馬県の中では最も組織規模の小さな消防本部である。群馬県のほぼ中央に位置し、観光地としても有名な赤城山を含め、その南面に広がる広大な地域を管轄しており、富士見村の県立赤城森林公園、赤城山頂のキャンプや、スキー、火口湖のスケート、釣り、六月中旬頃のつつじの群生、秋の紅葉は有名である。国道三五三号線沿線では、オランダ風車で有名な大胡町のグリーンフラワー牧場、宮城村の赤城千本桜、テーマパーク赤城クローネンベルク、その他赤城温泉郷、赤城南面唯一の水芭蕉群生地として有名な天神山自然公園、赤城山唯一の滝として知られている粕川村の不動の大滝や国定忠治が役人から追われた際に隠れたといわれている忠治の岩屋などがある。管轄面積は一六四・三m2、人口五六、九六〇人、現在は一本部・一署・一分署、七八人の職員と四町村の消防団一九分団の団員四五四人とともに、地域住民の安全を日夜見守っている。

 

・ 救急業務の高度化体制の整備

管内には救急指定の医療機関が一つしかなく、救急搬送の多くが近隣都市部の医療機関で、かつ管轄している面積が広大なため、一件あたりの救急処理に要する時間は三〇分以上となっている。このため当本部では消防署の隔日勤務職員の多くに救急II課程の教育を終了させ、積極的に救急救命士資格職員の養成に努め、地域の医療機関との密接な連携を図りながら救急隊員の病院研修を実施している。また、救急II課程修了職員対応の資機材を装備した救急自動車二台を配備するとともに、平成九年度には念願の高規格救急自動車を整備し、救急業務の高度化体制がスタートした。現在は地域住民に対する応急手当の知識と技術を普及するための講習会も開催している。

 

・ 消防団との連携

山間地をかかえる当消防本部は消防団との連携が特に重要であることから、日頃から合同で中継送水訓練を行っており、災害発生時には、極めてスムーズな現場活動を行っている。また、消防団員の自覚が極めて高く、各種災害はもとより、訓練等においても非常に高い出動率となっている。(写真)今年の五月三日に赤城山で遭難事故が発生したが、連休中にもかかわらず、担当消防団では、九〇%以上の団員が出動し、捜索に当たっている。

 

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・ 前橋市との統合

組合を構成している市町村議会の決議は経ていないものの、既に組合構成五市町村により平成一一年度に県庁所在都市の前橋市消防と統合することが昨年七月の組合理事会で正式に決定された。現在では、スムーズな消防統合の実現に向けた課題の整理・検討が消防当局者を含め行政当局との問で鋭意進められているが、いずれにしても地域住民が受けられる消防行政サービスが低下することのないよう全消防職員が一致団結して業務に精励することが、消防職員にとって住民からの負託に応える唯一の義務であることを考え「更なる飛躍」を考えている。

 

・ 地域住民に密着した消防行政

高山消防長は「救急救助を基本とした地域住民に密着した消防活動を行うことが我々の使命である。特に、山間地の守りは消防団の力によるところが大きく、これらを見失うとこの豊かな自然を維持することはできない」と地域とともに生きてきた、消防長のことばが印象的であった。

(笹目 雅晴)

 

 

 

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