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このように広大な管轄区域のため、火災が発生し現場に到着するまでには相当の時間を要する。したがって、初期の消火作業には地元消防団の活動が必要不可欠である。特に、山林火災においては、津々浦々の山道までを知り尽くした地元消防団員の先導により消火活動を実施している。

 

一 広域消防はまず住宅防火から

管内がとにかく広い。あちらの山の中腹に一軒、こちらの頂に二軒と分散しており、現地に到着するまでがまた一苦労で、目の前に目標の住宅が見えているのに一山をぐるっと回ってやっと到着する。こんな具合で査察に要する時間は市街地の三倍は余分に掛かる地区がある。

このように、一戸一戸の家々を訪問し、その住民と住宅防火について話をしながら次の点を注意するよう指導している。

1] 正しい一一九番通報のかけかた

2] 正しい火気器具等の使用方法

3] 正しい消火器の使用方法

4] 自動消火装置式石油ストーブの有無

5] ガソリン、灯油等危険物の貯蔵、取扱い

これらについて、最近の火災の状況等を折り混ぜながら話し、火災ゼロを目指していることを理解していただいている。

 

二 予防および広報活動

夏には保育園、幼稚園児を対象に防火花火教室を開催し「防火思想は幼年期から]を合い言葉に、花火による火災や事故を絶対に起こさないよう職員一同汗を流しながら指導している。

一方、地域の学校、事業所の消防訓練指導にも積極的に出向し、地域に密着した火災予防を展開している。

また、当管内の約九〇%が山岳地帯であり山火事防止についても、職員の余暇を利用して、手づくりの防火看板を作成し、ハイキングコース、林道などに掲出し、訪れる人々に山火事防止を訴えている。

平成九年は当本部開設以来の七八件もの火災が発生した。昨年同期に比較して三一件の増加となっているが、増加した主な原因は放火又は放火の疑いによるものである。これは、昨年の異常な酷暑と小雨の連続により乾燥したことによるものと当初思われていたが、件数が増えるにつれ、「これは」と思うようになり、結果として復元家屋の火災を含め、一二件もの類似した火災が発生した。

この異常とも言える不明火に、市民、町民の不安は高まり、これに対し職員自らが特別チームを編成し、警察官と共に警戒に当たり、地元新聞をはじめ、同報無線、広報紙を借りての啓発活動も行ったが結局容疑者は特定できなかった。

しかし、この成果が徐々に現れ本年二月以降は平穏な日々が続き、以後それらしい不明火は発生せず職員一同胸を撫でおろしている。

これらを教訓に、本年の火災予防運動でも車両、同報無線による広報活動をはじめ、大規模店舗内の放送設備を利用しての予防広報、横断幕、懸垂幕等の掲出、各家庭への防火チラシの配布等を実施し、火災の減少を願い市民、町民の安寧の維持に努めている。

 

おわりに

昨年四月の政令指定により、管内二か所に分遣所が新設されることから、熟練した署員を新設の分遣所に配置するため既存署所の戦力の劣勢が避けられない。

しかし、これを理由に戦力と行政サービスの低下とならないよう以前にも増して「健康と安全を高めるまち」を目標に職員一同各種災害の発生防止と被害の軽減に努め市民、町民の負託に応えるべく努力していきたいと思う。

(福代 武志)

 

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