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(一二) 損害額等

なし(人的被害は無く、物的にもプレス金属の燃焼火熱による変質劣化等は無く、鉄を再利用するためシュレッダー材としては無損であった。)

(一三) 出火原因

廃車プレス内の可燃物の自然発火による。

 

二 出動車両及び人員

・ 出動車両

指揮車 一〇台

水槽車 六台

普通ポンプ車 四三台

救助工作車 一台

高所放水車 一台

はしご車(四〇m級) 一台

屈折はしご車 二台

化学車 五台

電源照明車 二台

小型ポンプ 一八台

防災ヘリコプター 一機

・ 出動人員

延べ消防職・団員一、二一二人

 

三 出火場所の概要

火災の発生現場は、当消防本部から北西約六kmの距離にあり、国道八号線を挟んで東西に工場が立ち並び、北側には住宅団地が密集し、南側には水田が広がる地帯である。消防水利としては、現場の前に消火栓一基と農業用水等が有り、また現場敷地の北側は、堤防を挟み上市川が流れている。

 

四 消防活動の概要

平成九年八月二九日(金)〇時一二分、滑川市消防本部からの「豊富産業(株)のスクラップ置場が燃えている」との通報により、第一分隊・水槽車が出動した。先着隊の「プレス済み廃車の山が燃焼し、延焼中である」との報告により、後続隊の出動及び隣接市町への応援要請を行うと共に消火活動を行うが火勢が強く、一向に衰えない状況であった。日の出とともに、はしご軍隊等の出動を依頼し高所からの放水や富山県の防災ヘリコプターによる空中からの消火活動(消火バケットでの放水、四七回・三六、四〇〇リットル)を行なったが、鎮火までに至らず長時間を要した。

 

五 本火災の特異事項等について

(一) 発生事業所の敷地が複数都市(上市町・富山市・滑川市)の境界部であった。

事務所棟及び工場棟 上市町

廃車プレス置場 富山市・滑川市(出火場所は滑川市有金)

(二) プレス内の残存可燃物が燃焼し、金属が灼熱して次々と延焼拡大したもので、燃焼部分の集積の内奥部は溶鉱炉状態になっており、また普通ポンプ車による低所からの放水では頂部に届かず、又、はしご車やヘリコプター等の高所からの放水も蒸散して有効注水とならず、重機を現場に搬入し、燃焼部分を少しづつ拡散しながら消火作業を行なった。

(三) 燃焼物は、エンジン・燃料及び燃料タンク・タイヤ等を取り除いた車両をプレスしたもので消防法上では規制対象外であるが、現場は座席シート、電気配線、内装品等の可燃物が取り除かれていないために燃焼したものである。また、プレスした際、可燃物がプレス内部に圧縮され、燻蒸状態が続き広範囲にわたり黒煙や異臭を発生させる原因となった。

(四) 覚知から鎮火まで二九時間という長時間であったため、出動した各都市において、交替要員(職団員)の確保と、消防ポンプ車両等の燃料の現地補給が不可欠であった。

 

おわりに

本火災の教訓から防火管理の徹底と延焼防止や火災発生時の消火活動を容易にするために、廃車を野積みする場合は、二〇〇m2の区画に五〇台の単位にし、区画との間は三m以上離すように具体的な安全対策を呼び掛けると共に、再発防止に全力を傾注していく所存である。

(古本 政博)

 

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