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ここで「一般要件」とは、輸送物の最小寸法、輸送中に予想される温度変化や振動等に対する強度、輸送物の表面密度限度及び漏洩線量当量率の限度等を定めたもので、すべての輸送物が満たすべき基本要件である。

「一般の試験条件」とは、通常の輸送において遭遇する可能性のある状態、たとえば車両等への積荷作業時での輸送物の落下、雨中での輸送、尖った物体の容器上への落下、輸送物上への物の積み重ね等を想定した試験条件をいい、水の吹付け試験、自由落下試験(輸送物の重量が一五t以上の場合、高さ〇.三mから落下)、圧縮試験、高さ一mからの六kgの鋼棒落下試験等である。

「特別の試験条件」は、過酷な事故に対し輸送物が耐えることが要求される試験条件で、高さ九mからの落下試験、高さ一mからの鋼棒上への落下試験、八〇〇〇℃、三〇分間の耐火試験、水深一五mでの浸漬試験等である。なお、放射能の高い使用済燃料に対しては、二〇〇mの浸漬試験が追加される。

また、核分裂性輸送物に対しては、一般及び特別の試験条件においても臨界にならないことが条件になっている。

以上の輸送物の安全性の確認は、L型、IP型及びA型輸送物については輸送物作成者または発送元の事業者側で行われ、B型及び核分裂性輸送物については、国により厳重な安全審査を通して確認が行われている。

(二) 輸送方法の安全性

核燃料輸送物の輸送にあたっては、車両や船舶等への積載方法、積載量制限、他の危険物との混載制限及び標識の表示等について法令で厳しく規制することで輸送方法の安全性を保証している。特にB型輸送物と核分裂性輸送物(一車両当りの輸送指数の合計が五〇を超える場合)については、これらの輸送方法の安全確認を国(運輸省)が行うことになっている。

陸上輸送においては、一般公衆に対する安全確保をより確実にするため、B型及び核分裂輸送物の輸送に対して、輸送物積載車両に伴走車をつけた隊列輸送が義務付けられている。(図一参照)。伴走車のうち先導する車は走行路の道路状態、交通事情その他安全輸送に必要な最新情報を調査、入手し、後続の輸送隊に連絡する役目を持っている。輸送物積載車両の前後の伴走車には、輸送責任者、放射線取扱者及び警備担当者が乗る。また、隊列のスムーズな走行を確保するため、特に必要がある場合パトカーが先導することもある。

(三) 輸送ルート

核燃料輸送を安全に行うためには、計画どおり輸送が行われることが重要である。これを保証するものは輸送ルートの安全性の確保である。

陸上輸送においては、走行予定道路の周辺状況、交通事情及び工事の有無等について的確に把握することにより、輸送ルート及び輸送の時間帯が定められている。特にB型及び規定値を超える核燃料輸送物の場合、通過する都道府県公安委員会に対し、輸送計画の届出が義務付けられているため、輸送ルート及び輸送時間帯に関する適切な指示及びコメントが必要に応じて出され、安全輸送が保証される。

(四) 核物質防護(P.P.)

核燃料物質(核物質ともいう。)は、その使用目的によっては核兵器となるため、ある量以上の核燃料物質の管理には特段の厳重さが要求されている。

特に輸送中は、刻々周辺状況が変化するため核燃料の盗取を防護する上で 、隊列輸送や連絡通信体制の配慮がなされている。これも広い意味での核燃料輸送における安全対策である。

 

 

 

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